林業 由利本荘市 にかほ市

県内で竹林がまとまって成育しているのは由利地域しかなく、種類はマダケ、モウソウチク、ハチクなどで、面積は約130ha、中には北限の地と言われているものもあります。20年くらい前までは、盛んに竹材やタケノコを生産し、竹林の整備を行ってきましたが、国内外産との販売競争、生産者の高齢化等が進み、生産の縮小、撤退が相次ぎました。現在の竹林は、長年手入れが行き届かないまま放置され、侵入竹の拡大が森林の成育・機能保全の障害になっており、生活環境への影響も懸念されています。

こうした現状に危機感を持った森林ボランティア団体が一昨年から荒廃した竹林の整備を行っていますが、施行規模が小さい、伐採材の処理に苦慮するなど、課題も多くあります。そのため、各種講習・研修会の開催、現地視察、展示PRなどにより、竹の利活用を普及し、竹林整備につながるよう取り組んでいます。

第1回 竹の利活用を知る

平成28年7月、由利本荘市の鮎川学習センター(旧鮎川小学校)で当講座が開催され、地域の竹林所有者や森林ボランティア関係者など33人が参加しました。

その中で、山形県遊佐町で竹炭工房「鳥海の杜」を運営している庄子正臣氏から、竹林整備や竹炭・竹材製品について講義を受けました。

「竹の徹底活用講座②」の様子

竹炭工房「鳥海の杜」が商品化している竹炭製品のいろいろ、このほかタケノコ掘りやアクセサリー作り体験もできます。

「あきた水と緑の森林祭①」での展示PRの様子

平成28年7月、にかほ市の道の駅象潟「ねむの丘」で当イベントが開催され、ロッカ森林保全ボランティアが竹炭製品を展示販売しPRしました。

「あきた水と緑の森林祭②」での展示PRの様子

本荘海岸林を守る会と由利町村竹林を造る会が竹材を活用した試作品展示と製作体験を実施しPRしました。

「竹資源利活用研修会①」の様子

平成28年7月、由利本荘市市民交流学習センターで当研修会を開催し、地域の竹林所有者や森林ボランティア・行政関係者など参加者30人で現地視察と情報提供・意見交換を行いました。

「竹資源利活用研修会②」の様子

現地視察②西目地区

棚積みされた伐採材の処理が課題、数年で支え杭が腐り崩れてしまい、特に、斜面にあるのはやっかいです。解決策として粉砕機の導入を検討しています。

「竹資源利活用研修会③」の様子

現地視察③岩城地区

タケノコの水煮加工(瓶詰め)が手軽にできる釜です。鉄板製で、30年以上使用していますが、頑丈です。製作費は2万円で受注しますが、製作は冬期間だけになります。

「竹資源利活用研修会④」の様子

薬剤メーカーからの地下茎を枯らす粉末除草剤の研究成果や産廃会社からの竹パウダー活用の情報提供をもとに、意見交換しました。

第2回 竹林を整備する

放置され荒廃した竹林(本荘赤田地区)

放置され荒廃した竹林は、隙間無く生え、立ち枯れが発生しやすくなります。

枯れた竹のほか雪や風で倒伏した竹で一杯になり、景観やほかの草木にも悪い影響を与えています。

スギ林に侵入し、スギを枯死させる竹(由利町村地区)

鹿児島県の調査データでは、竹密度が約100本/10aになるとスギ造林木が10%、約300本/10aでは25%、約600本/10aでは50%が枯死する傾向にあることやスギの樹高がタケより2m以上高ければ、竹に被圧されにくいことが報告されています。

下層植生がほとんどない竹林(本荘赤田地区)

竹の成長は早く、高密度に密生する竹林は枝葉の量も多くなり、下草が生えず、単純な植生になります。

イネ科のタケは、葉にガラス質を含むため落ちて地表を覆うと水を通しにくくする性質があります。また、竹の地下茎は浅いため、傾斜地の竹林は土砂崩れの危険があります。

竹林を整備している様子(10/5西目沼田地区)

竹の材質は堅いため、伐採や玉切りは主に目の細かい手ノコを使います。

伐採は地際か腰の高さで、倒したい側に少し切れ目を入れ、反対側から倒れるまで切ります。

蚊の発生防止のため、節に水がたまらないよう棒などで節を抜きます。伐採のほか、薬剤処理(単木駆除)、タケノコ掘りで竹林を整備しています。

整備された竹林(西目沼田地区)

見通しのよい竹林ですが、適正な密度を保つには毎年欠かさず、伐採やタケノコ掘りなどの作業が必要になります。

継続性のある竹林整備は、景観の悪化、周囲への拡大、生物多様性の低下、土砂災害の危険性などを防止することにつながります。

薬剤散布による試験地の設定

10月19日西目沼田地区において、400m2(20m×20m)の試験地を設定しました。

これまで単木駆除での施行はありましたが、面的駆除は初めての試みです。

散布時期はタケノコが発生するときが一番いいようですが、翌春にも同じような試験地を設けて比較する予定です。毎年タケは生えてくるため、薬剤を面的に使用することで作業が楽になります。

薬剤の使用方法

薬剤名は「クロレートS」粒剤。放置竹林への使用量は45~60kg/10a、使用回数は1回、使用方法は株処理及び全面土壌散布、使用時期は生育期になります。

単木には10~20g/10a、節間に穴を開けそのまま投入する方法です。

薬剤の試験効果

「クロレートS」の土壌散布による検証結果について、第127回日本森林学会大会(H28.3.27~30日開催)で発表があり、出現するタケの本数が激減したこと、地下茎の掘り採り調査では、散布から2年後に地下茎の腐朽が認められたことが報告されています。

(引用文献:江上浩・久本洋子・鈴木重雄・高橋幸貴・須藤智博・尾川新一郎・若林利昌・遠藤良太.2015.事前伐採と塩素酸ナトリウム粒剤(クロレートS)全面土壌散布の組み合わせによる放置マダケ林の防除.森林防疫 64:20-28.)

穂先タケノコ(モウソウダケ)採りの方法

モウソウダケのタケノコは掘って採取しますが、伸びたものを採取する楽な方法もあります。

先端を切った竹は後に枯れるので、竹林の密度管理にも適していますが、蚊の発生を防ぐため節に水がたまらないようにします。

マダケ(ガラタケ)採りの方法

マダケ(ガラタケ)も掘るのでは無く、地面から出ているものを採ります。

モウソウダケとは違い地下茎が浅くすぐ出てくるためです。地面近くを握り、折り曲げるようにして強く引っ張りスポッと抜けるように採ります。

第3回 竹を利活用する

竹炭製造の様子(本荘船岡地区)

竹材を釜の大きさに合わせて1mくらいに造材し、炭釜の奥から立てかけて、入り口付近は枝葉をまとめて着火用に使います。

最初の釜入れから煙の色に一番注意しながら、おおよそ一週間位で窯出しします。

竹酢液の収集(本荘船岡地区)

煙と一緒に排出される竹酢液を採取するため、煙突に細工します。

写真は半円形の硬質塩ビ雨どいをつけています。煙の色合いをみはからいタンクへの流入を誘導します。

木炭よりタール分は少ないですが、タール分を取り除くため一定期間寝かせます。すると、透明感のある竹酢液のできあがりです。

シロアリやアブラムシの防除などに効果があり、使い方は他にも色々とあります。

公共福祉施設に使用した竹炭

平成26年度に開設されたにかほ市にある福祉交流施設「たんぽぽ」の床下に使用されている竹炭です。

木造平屋建1,407.71㎡の当施設には2,372kg(1,186袋)が使用されています。

竹炭を利用したキノコ原木栽培

キノコ原木の木口を竹炭で覆っています。

生産者からは発生状況が改善され、収量も多くなったとの情報がありました。

竹炭はアルカリ性で雑菌を寄せ付けないことや小口からの乾燥防止にもなっているためでは・・・との話も聞かれました。

竹炭の展示販売の様子

本荘赤田地区で生産された竹炭や竹酢液は、由利本荘市の文化交流館「カダーレ」や赤田地区にある「東光館」などで展示販売しています。また、各地区の産業祭や秋田駅前周辺で開催されるフリーマーケットにも出店し、PRに努めています。

竹チップ・パウダーを製造する粉砕機

Φ12.5cmまでの竹を枝葉つきのまま投入でき、1時間当たり120kgをチップ化・パウダー化します。

チップ用Φ8mm/パウダー用Φ5mmのスクリーンでサイズの調整ができ、自走式で移動も楽々です。

メーカー(株)大橋(GS122GB)が製造しています。

竹チップ・パウダーの利用

竹チップや竹パウダーは土壌改良材、病害虫予防、雑草抑制など様々な用途に使われています。

竹は窒素成分が少ないため、土壌に使用する場合はチッソ飢餓に注意する必要があります。

竹パウダーは(株)さいせいの店頭で販売しています。

加工性の高い竹材

竹材は用途に合わせて様々な日用品をつくることができる、軽くて加工性の高い素材です。

竹テント試作の様子採りの方法

7月11日旧鮎川小学校で竹テントを試作してみました。

竹のサイズは、柱:直径50mm・長さ2m、梁:直径30~40mm・長さ2.6m、尾根部と?杖:直径25mm・長さ0.8~2.6mのものを使いました。

ほかに固定するための金具やネジ類、天幕シートが必要になります。

タケノコ(ガラタケ)炊き込みご飯の素

由利地域の特産品であるガラタケを活用した加工品の開発が進められています。

その一つに、ガラタケを使った「炊き込みご飯の素」が商品化されました。

地元産のしいたけや「うわてん」(鱈しょっつる)を使用し、素材にこだわった商品となっています。

竹林の荒廃は全国的に大きな問題となっています。地球温暖化の進行もあり、管内でも竹林の荒廃は深刻さが増しています。タケノコや竹材を地域資源として捉え利活用し、竹林整備を進める必要があります。

取材協力:竹を徹底活用し隊・ロッカ森林保全ボランティア・本荘海岸林を守る会・由利町村竹林を造る会・(株)さいせい・渡辺 剛氏(本荘船岡地区)・にかほ市社会福祉協議会・(株)幸栄丸

お問合せ

お問合せ先秋田県由利地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興チーム
住所〒015-8515 秋田県由利本荘市水林366番地
電話番号0184-22-7551
FAX番号0184-22-6974

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