農業 スマート技術

農業者の高齢化や担い手の減少に伴う労働力不足が顕在化するなど、農業を取り巻く状況は厳しさを増しています。県では、こうした問題を克服するための有効な手段の一つとして、スマート農業の導入を進めることにしており、水稲・大豆のブロックローテーションに取り組む大規模土地利用型農業法人において、今年度から2年間の実証試験を開始しました。

この実証では、GPS(衛星利用測位システム)を活用した直進アシスト機能付きの田植機やトラクター、収穫しながら収量を測定できるコンバイン、ドローンでの撮影とリモートセンシング技術による生育量測定技術等を活用して、作業の効率化を図りつつ、収量の最大化を目指しています。今後、実証を通じて、新技術の導入効果の検証と経営評価を行い、生産現場への普及を図っていくことにしています。

ここでは、田植えから収穫までのスマート農業一貫体系について、動画を交えながら情報提供します!
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(実施主体:農研機構)の支援により実施しています。

目次

第1回 直進アシスト機能を使用した田植え作業

第2回 自動操舵システムを使用した大豆の高速精密耕起作業

第3回【関連】自動操舵システムを使用した大豆の耕うん同時畝立て播種作業

第4回 ドローンとマルチスペクトルカメラによる水稲の生育量の把握

第5回 【関連】自動操舵システムを使用した大豆の高速培土作業

第6回 ラジコン草刈り機による法面の除草作業

第7回 スマート機能を搭載した汎用コンバインでの稲刈り作業

第1回 直進アシスト機能を使用した田植え作業

直進アシスト田植機

GPSを活用した直進アシスト機能を使って、田植え作業を行いました。

直進作業では、アシスト機能によりハンドルの操作をせずに田植えができました。

さらなる省力・低コスト化へ

この田植作業では、高密度播種苗(密播)を使用し、除草剤、殺菌殺虫剤の散布を田植えと同時に行うことで、さらなる省力・低コスト化を目指しています。

高密度播種苗とは

10a当たりの使用箱数を通常の1/2~1/3まで削減することを目的に、育苗箱1箱当たりに播く種もみを多くする技術です。概ね2倍以上となる250g以上を播種し、育苗期間が短縮されるほか、田植え作業の大幅な省力化につながります。

第2回 自動操舵システムを使用した大豆の高速精密耕起作業

使用したシステム

高精度で直進工程を自動走行できる操舵システムを利用して、大豆播種前の1回目の耕起(荒起こし)を行いました。スタブルカルチを使用することで、時速6km以上の高速で作業することができました。

この作業では、高速化と軽労化だけではなく、工程間隔を精密に制御することで、工程の重なりを減らし、作業時間の短縮が期待されます。

作業の詳細はページ下部の動画でも説明しています。

運転席はこうなっています

写真右側には、ほ場内でのトラクターの作業状況が確認できるモニターがあります。

衛星の測位情報を基に、自動で方向を制御することができるハンドルが取り付けられています。

補正情報を送信する基準局

衛星の測位情報だけでは、誤差が大きくなります。

このため、地上に基準局(写真)を設置し、地上から補正情報を送信します。今回使用した自動操舵システムでは、基準局から補正情報を得ることで、誤差範囲2~3cm程度の高精度で測位が可能になります。

取材協力:農事組合法人 たねっこ

第3回 【関連】自動操舵システムを使用した大豆の耕うん同時畝立て播種作業

作業機械を紹介します

※農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に関連した取組です。

湿害回避技術である「耕うん同時畝立て播種技術」と、高精度で自動で直進走行ができるGNSS自動操舵システムの組合せによる収量確保と作業省力化を目指し、大館市の農業法人において実証試験を行っています。

作業の詳細は下部の動画を参照してください。

GNSS自動操舵システムとは

「GNSS」は「Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)」の略で、GPSや準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称です。ここから得られた測位情報を基に作成された走行経路に沿って、トラクターの方向を自動で調整するシステムのことをGNSS自動操舵システムといいます。衛星情報に加え、地上に設置した基準局からの補正情報を得ることで、高精度(誤差範囲3cm以内)で測位が可能です。

取材協力:農事組合法人 立花ファーム

第4回 ドローンとマルチスペクトルカメラによる水稲の生育量の把握

空撮用ドローン

水稲の生育量を計測する専用カメラを取り付けたドローンを使って、追肥(穂肥)量の判断が必要となる幼穂形成期頃の生育状況を見える化します。

ドローンは、マニュアル操作により地上30mまで上昇した後、事前に作成した経路上を自動航行し、上空から稲を撮影します。 1回の飛行(10~15分)で約3haの撮影が可能です。

マルチスペクトルカメラとNDVI

使用するカメラは、マルチスペクトルカメラといい、人の目に見える可視光だけでなく、目には見えない近赤外域まで計測することができます。

このカメラで撮影した画像を分析することでNDVI(正規化植生指数)を算出し、生育量を把握します。

NDVI(正規化植生指数)とは

作物の生育の活性度合いを示す指標であり、この値が低い地点は、植物の活性が低いことを表し、追肥等により植物の活性を維持・向上させる必要があります。

解析画像

解析画像では、生育量が多い方から赤、黄、黄緑、緑、水色、青の順に色分けされます。

ほ場ごとの特性や、ほ場内の生育ムラがマップ上で把握できるので、追肥の参考にしたり、翌年の施肥の改善に活用できます。

取材協力:農事組合法人 たねっこ

第5回 【関連】自動操舵システムを使用した大豆の高速培土作業

作業機械を紹介します

※農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に関連した取組です。

高精度(誤差範囲2~3cm)で直進工程を自動走行できる操舵システムを活用して、中耕ディスク培土機による培土作業を行いました。
自動操舵システムを用いてまっすぐ播種した大豆ほ場(第3回参照)において、同じシステムを使うことで、播種時の畝と平行に機械が進みます。
作業は、2枚のディスクをけん引して株元まで土を寄せる中耕ディスク式培土機で行い、ロータリー式の2倍程度の速度で株元まで確実に培土することができました。

取材協力:農事組合法人 立花ファーム

第6回 ラジコン草刈り機による法面の除草作業

作業機械を紹介します

この草刈り機は、ラジコンで機体を操作します。
刈り払い機の操作が難しい斜面の草刈りでも、安定した場所から機体を操作できるため、安全であることに加えて、ほこりの影響もなく、快適に作業できます。

機械の特徴

  • 法面の斜度は最大40度まで適応可能で、斜度に応じて自動で車輪が山側に傾き、ずり落ちを軽減するため、傾斜地でも楽に直進走行ができます。
  • 刈刃は回転式で、車体下にあるため、後進でも作業でき、旋回は必要ありません。リモコン操作は前後進・左右方向のスティックのみで、非常に簡単です。
  • 車体より大きい雑草もしっかりと刈ることができます(適応草丈:60cm)。

実際に使用した作業者は、傾斜のある法面のほか、刈り払い機で細かい操作を必要とするコンクリート際などでの作業にも役立つと話していました。

取材協力:農事組合法人 たねっこ

第7回 スマート機能を搭載した汎用コンバインでの稲刈り作業

作業機械を紹介します

スマート機能を搭載した汎用(普通型)コンバインで稲刈りを行い、 作業効率の向上効果を検証しました。

搭載されたスマート機能

  1. GPSと基準局からの補正情報を活用した、有人での自動走行。(「第2回 自動操舵システムを使用した高速精密耕起作業」を参照)。
  2. 収量・食味計測機能:刈り取りながら、コンバインで収量や玄米タンパク質含有率、籾水分を計測。
  3. 栽培管理システムと連動し、推定収量等をマップ化。

汎用コンバインでの稲刈り

汎用コンバインの走行速度は自脱型に及びませんが、刈り幅が広いため、1haほ場での作業時間は5条自脱型コンバインと同程度(2~3時間)でした。

脱穀後の籾

刈り取りロスも少なく、しっかりと脱穀されています。

大豆等の畑作物と水稲の刈り取り作業を一台の汎用コンバインで行うことで、機械にかかるコストの削減にもつながります。

推定収量マップ

収量・食味計測機能で得られたほ場内の収量や玄米タンパク質含有率の情報は、栽培管理システムに反映され、収量等の分布を画面上のマップで確認することができます。

ほ場全体の収量だけでなく、ほ場内の収量のバラツキも見える化されるので、翌年の施肥設計の改善等に活用できます。

取材協力:農事組合法人 たねっこ

お問合せ

お問合せ先秋田県農林水産部 農林政策課 企画・広報班
住所〒010-8570 秋田県秋田市山王四丁目1番1号
電話番号018-860-1723
FAX番号018-860-3842

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