小ギクの生産現場では、大規模化に向けた効率的な生産体系の確立が課題となっています。こうした課題に対し、県では、需要期の安定出荷と作業の省力化を図るため、スマート農業の導入を進めることにしており、今年度から2年間、男鹿・潟上地区園芸メガ団地において実証試験を実施します。
ここでは、ほ場づくりから収穫・調整までのスマート農業一貫体系について、動画を交えながら情報提供します!

※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:花B01、課題名:先端技術の導入による計画的安定出荷に対応した路地小ギク大規模生産体系の実証)」(実施主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により実施しています。

目次

第1回 スマート農機によるほ場準備と定植作業

第2回 電照操作による開花調整

第3回 選別・調製作業の機械化体系

第4回 日持ち試験を行いました(鮮度保持技術の実証)

第5回 収穫機による収穫作業を行いました

第6回 計画生産・出荷管理システムで情報共有を図っています

第1回 スマート農機によるほ場準備と定植作業

本実証の概要

機械の特徴~ほ場準備~

この機械では、畝(うね)立て、施肥、マルチ張りを一度に行うことができます。畝部分のみに施肥するため、慣行の全面施肥に比べ3割の肥料の削減が期待できます。
さらに、トラクターに装着したGPS制御装置により、まっすぐな畝を容易に作ることができます。

まっすぐな畝づくりに成功

GPSを活用することで、まっすぐな畝づくりができました。それだけでなく、従来必要だった作業前の印付けが不要となったことから、作業の省力化につながりました。

機械の特徴~移植作業~

マルチに穴をあけ、定植と同時にかん水も行うことができる機械です。株間の間隔も設定可能で、適正な栽植密度に調整することができます。

移植作業が行われています

移植作業は、1名が機械に乗って操作し、1~2名の補助者が苗を補充しながら作業を行っています。
こちらも、条間、株間ともに設定どおりの精度で定植できました。延べ作業時間は(人数×作業時間)は、手植えと比較して約7割削減されました。

第2回 電照操作による開花調整

メガ団地の全景(空撮)

キクはお盆や彼岸が大きな需要期となります。お盆の需要期まで残り1か月となり、園芸メガ団地では、5月に定植された小ギクが生長して、ほ場全体が緑色に色づいてきました。

実証ほ場も生育は順調です

前回紹介した半自動乗用移植機で定植された小ギクの現在の様子です。
移植以降は好天に恵まれ、順調に生育しており、出荷に向けた管理作業が進められています。

露地電照が設置されました

露地電照の実証ほ場では、耐候性赤色LED電球が設置されました。

露地電照とは

キクの長日条件(光が当たる状態)で花芽ができなくなる性質を利用して、夜間に電気を点灯して栽培することで、開花期を人為的に調整する技術を電照栽培といい、露地での電照栽培を「露地電照」といいます。

夜間電照中です!

午後11時から翌朝4時までの間、写真のように電照しています。赤色LEDの光は、虫にとっては感知しにくいため、害虫が寄ってくる心配はありません。

電照モニタリングシステム

電照の稼働状況をモニタリングするシステムです。電照の通電を感知する装置やカメラの他、温度、湿度、照度センサーが設置されており、これらのデータもモニタリングできるようになっています。

点灯状態をチェック!

  • 画面上部:定点カメラの映像
  • 画面下部:温度・湿度・照度の推移

ほ場から離れていても、スマートフォン等で電照が正常に動作しているかをチェックできます。万が一、消灯してしまうなどのトラブルが発生した場合は、メールで状況が通知されるため、安心です。

第3回 選別・調製作業の機械化体系

蕾が色づいてきました

男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、キクの蕾が色づき、収穫時期を迎えています。

収穫作業中です

今年は好天に恵まれ、収穫作業は順調に進んでいます。
品種や株ごとに開花の進み具合が異なるため、1本ずつ見極めながら、手で折り取って収穫します。

一般的な調製作業

調製施設では、出荷規格に合わせて手作業で選別します(写真右側)。選別後は「フラワーバインダー」という機械によって、余分な葉や茎のカット後、10本ごとの結束を作ります。

この一連の調製作業は、一部が自動化されているものの、全作業時間のうち約4割を占めており、作業の効率化が求められています。

機械による選別・調製作業

作業効率化のため、「切り花調製ロボット」を導入しました。この機械により、選別・結束作業が自動で行われるため、作業時間と作業人員が削減され、大幅な効率化が期待されます。

切り花調製ロボットとは

切り花調製の一連作業を自動で行う機械です。1人の作業員によって、1本ずつ機械にセットされたキクは、適切な長さに切断され、余分な葉を除去された後、重量ごとに選別されます。
規格ごとに10本たまると、アームにより結束機(手前の白と黄色の機械)へ運ばれて、結束された後、等階級ごとに仕分けられます。

第4回 日持ち試験を行いました(鮮度保持技術の実証)

露地電照ほ場の経過

露地電照を実施したほ場の収穫前の様子です(作業の内容は「第2回 電照操作による開花調節」を参照)。

露地電照をしなかったほ場では、好天の影響もあり、開花が計画より早まりましたが、露地電照を行ったほ場では、開花を調節できたことにより、需要期に合わせた計画どおりの出荷につながりました。

鮮度保持技術の実証

暑い時期の出荷では、市場までの輸送中に葉の黄化や萎れ(しおれ)が発生し、販売できなくなることがあり、これを出荷ロスと言います。

キクの鮮度を保持し、出荷ロスを減らすための処理方法について、メーカー等と協力し、実証試験を行いました。

写真は、試験に使用するサンプルを選んでいる作業の様子です。

実証試験は、キクの体内で作られる老化物質の発生を抑える効果がある「STS剤」を吸収させた場合と、通常どおり水のみを吸収させた場合で比較を行いました。

写真の手前で試験前のサンプルの重さを測定し、後方でSTS剤を処理している様子です。

今回は、処理剤の有無に加え、箱詰め時の包装資材の有無による保管後の鮮度の違いについても検証しました。

写真のようにビニール製の包装資材でキクを包むことで、湿度を保持することができます。

市場到着後、サンプルを回収し、キクの鮮度状態を調査しました。

品種や処理剤の有無、包装資材の有無など様々な条件を変えたサンプルが並んでいます。

鮮度評価は、花や葉の状態を確認し、5段階にランク分けする方法で行います。

今後、評価結果を分析し、最適な鮮度保持技術の確立を目指します。

第5回 収穫機による収穫作業を行いました

収穫作業が行われています

男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、彼岸向け品種の収穫作業が行われています。

写真は、手作業での収穫の様子です。キクは通常、同じ管理をしていても、花ごとに開花の程度が異なるため、人の目で1本ずつ見極めながら収穫作業が行われます。

手作業での収穫は、多大な労力と時間を要するため、出荷適期における生産量が制約され、このことが、規模拡大を制限する要因の一つとなっています。

露地電照ほ場の開花状況

露地電照なしほ場(左)では、開花にばらつきがあり、黄色と緑の蕾が混在しています。これに対し、露地電照を行ったほ場(右)では、開花の程度が均一で、収穫機による一斉収穫が可能な状態になっています。

(機械での一斉収穫を行うためには、雑草等が無いきれいなほ場であることなど、様々な条件があります。)

小菊収穫機

こちらが実証試験に使用した「小菊収穫機」です。

写真左手前方向に進みながら、横に並ぶ2つの逆V字部分で2条同時に刈り取ります(詳しくは下部の埋め込み動画を参照)。

一斉収穫中です

コンバインでの稲刈りのように、小ギクが次々に刈り取られていきます。

また、キクが倒れないように設置しているフラワーネットは、通常は収穫後に別作業で回収しますが、機械による刈り取りでは、上部に設置されたロールに巻き取られます(写真右上)。

この作業が機械化されることも、生産者にとっては大きな負担軽減につながります。

刈り取られたキクは…

刈り取られたキクは、後方の荷受け台に溜まっていき、一定量になると専用の収穫布で巻かれ、後ろを走る台車(写真左側)に載せられます。
 

台車に積まれたキクは、ほ場からまとめて搬出することができます。

キクを搬出し、途中で取り外した支柱を回収すれば、収穫作業は終了です。

あっという間に作業は終了

長さ約20mの畝では、10分程度で収穫することができ、生産者や見学者からは驚きの声が多く聞かれました。損傷や、開花のずれによる出荷ロスはほとんど見られませんでした。

第6回 計画生産・出荷管理システムで情報共有を図っています

冬期間の親株管理

冬期間、園芸メガ団地のメンバーは、キクの親株管理をしつつ、今年度の経営実績の取りまとめや次年度の生産計画の検討なを行っています。

親株管理とは

今年度収穫を終えた株を、親株としてハウス内に植え付けし、病害虫防除や温度管理を行うことで、健全な新芽を発生させる管理作業です。この新芽を翌年の苗として利用します。

システム操作研修会

生産計画は「計画生産・出荷支援システム」を活用して行います。
作業以外の時間を活用して、「計画生産・出荷管理システム」の機能を十分に活用するための勉強会を開催しています。

計画生産・出荷管理システムとは

計画生産・出荷管理システムとは、「誰が」「何を」「いつ」「どれだけ」作っているか等の情報をシステム上に蓄積し、集出荷団体(JA等)を含めた産地全体で共有できるシステムです。

蓄積されたデータに基づいて、品種ごとに出荷見込量を把握できるほか、具体的な作業計画の策定に役立てることができます。

まずは出荷計画を入力

まず始めに、生産者は、栽培品種の特性や、作型ごとに出荷計画等の情報をシステムに登録します。登録情報を基に、定植や摘芯など各作業及び出荷の予定日が示されるので、これを参考に作業を進めていきます。

さらに、実際の作業日や生育状況を入力することで、その後の作業や出荷の予定日が自動的に修正され、より正確な出荷予測につながっていきます。

出荷予定数量を入力すると…

出荷時には、生産者が規格ごとに出荷箱数を入力し、JA等の集出荷団体がその情報をシステム上で把握します。

従来はFAXで報告していましたが、より簡単かつ確実に報告することができます。

出荷予測が見える化!

市場など実需者との取引では、出荷時期や量などの情報を随時提供することが重要です。

集出荷団体では、実際の作業日や生育状況が反映された精度の高い出荷予測を、グラフ等によりリアルタイムで把握できることにより、有利販売や契約栽培につなげていくことが期待されます。

取材協力:男鹿・潟上地区園芸メガ団地利用組合

お問合せ

お問合せ先秋田県秋田地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興班
住所〒010-0951 秋田県秋田市山王四丁目1番2号
電話番号018-860-3371
FAX番号018-860-3363

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