令和2年度花きスマート農業技術実証を紹介します!
小ギクの生産現場では、大規模化に向けた効率的な生産体系の確立が課題となっています。こうした課題に対し、県では、需要期の安定出荷と作業の省力化を図るため、スマート農業の導入を進めることにしており、今年度から2年間、男鹿・潟上地区園芸メガ団地において実証試験を実施します。
ここでは、ほ場づくりから収穫・調整までのスマート農業一貫体系について、動画を交えながら情報提供します!
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:花B01、課題名:先端技術の導入による計画的安定出荷に対応した路地小ギク大規模生産体系の実証)」(実施主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により実施しています。
目次
令和2年度 第1回 自動直進機能付きうね内部分施肥機の実演会を行いました
令和2年度 第2回 電照操作による開花調節の実証を行っています
令和2年度 第3回 収穫機と選花ロボットの作業を公開しました
第1回 自動直進機能付きうね内部分施肥機の実演会を行いました
設立6年目を迎える男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、約5haのほ場において、小ギクを中心としたキクの栽培が行われています。
男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、スマート農業の導入による作業の省力化と需要期安定出荷体制の確立を図るため、令和元年度から2年にわたり、「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に取り組んでいます。
実証2年目の今年度は、各作業にかかる時間やコストを分析し、経営の面から導入効果の評価を行うことで、スマート農業技術の普及性について検証します。
ここでは、ほ場準備から収穫・調整までのスマート農業一貫体系について、動画を交えながら情報提供します!
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:花B01、課題名:先端技術の導入による計画的安定出荷に対応した路地小ギク大規模生産体系の実証)」(実施主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により実施しています。
キクの生育は順調です
男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、5月下旬から6月上旬にかけて、キクの定植作業が盛んに行われ、現在も順調に生育が進んでいます。今回は、スマート農業機械を活用したほ場準備作業の実演会の様子をご紹介します。
実演機を紹介します
「自動直進機能付きうね内部分施肥機」を使用して、ほ場準備を行います。この機械では、あらかじめ作成した基準線に平行して自動走行する機能を活用することで、まっすぐなうねを作ることができます。
導入効果はここにも
これまで使用していたうね立て機では、直進するための目印として、うねの始点と終点にポールを設置したり、経路に足跡を付ける作業が必要でした。メガ団地のような広大なほ場では、この作業だけでも相当な時間と労力を要します。
今回は、自動直進機能によってこの作業が不要になり、作業者の負担は大幅に軽減されました。
晴天の中で行われた実演会
実証機械の実演会では、男鹿・潟上地区園芸メガ団地利用組合の組合員が実際に運転しました。吉田組合長は「自動直進機能があると、後方のアタッチメントの動きに意識を向けることができ、作業ミスの防止につながるため、効率が良い。」と話し、更なる規模拡大への意欲も示していました。
第2回 電照操作による開花調節の実証を行っています
キクの生育は順調です
この団地では、病害虫防除などの管理作業が行われています。盆に出荷する品種は、つぼみが見え始め、収穫間近です。
今回は、需要期安定出荷に向けた、電照操作による開花調節の実証調査についてご紹介します。
電照操作(でんしょうそうさ)とは
キクは、一定時間以上光が当たると花芽を作らない性質があります。この性質を利用して、夜間に照明を点灯して栽培し、開花期を人為的に調節する技術のことを「電照操作」といい、露地での電照操作を「露地電照」といいます。
電照に使う耐候性赤色LED電球
露地電照を行う実証ほ場には、耐候性赤色LED電球が設置されています。露地では、防水性や耐久性に優れた耐候性電球を使用します。
また、赤色LEDの波長は、他の光源よりも害虫を寄せ付けにくい特徴があります。
電照栽培中です
夜間の点灯状況です。過去の試験結果に基づき、花芽の形成を抑制するのに最も効果的である時間帯(23時~翌4時)に点灯しています。
計画的消灯電照栽培
全てのキクに同じ電照操作を行うと、需要期の出荷はできても、収穫・出荷作業が集中してしまい、労働力が不足してしまいます。
そこで、電照を終了すると花芽の形成が進む性質を利用し、ほ場やエリアごとに電照期間を変えることで、開花時期のコントロールが可能になります。この方法を「計画的消灯電照栽培」といいます。
これによって、収穫・出荷作業を分散させ、限られた労働力でも、高品質のキクを需要期間内に効率よく出荷することができます。
調査を進めています
電照栽培に適した品種の特徴として、花芽ができるまでの期間が安定していることや、気温の影響を受けにくい(=光の有無だけで開花を調節しやすい)ことなどが挙げられます。
このような品種の特性を把握し、電照栽培に適した品種を選定するため、品種ごとに草丈や葉数の測定、開花の進み具合の確認を行い、電照操作がキクに与える影響を調査しています。
また、夜間には、光がムラなくキクに当たっているか調べるため、様々な地点の光の強さを測定しています。
第3回 収穫機と選花ロボットの作業を公開しました
収穫期を迎えたキク
キクの需要期である彼岸を控え、小ギクの蕾が色づいてきています。
電照操作により、開花期が揃ったキクのほ場において、一斉収穫ができる収穫機や選花ロボットでの作業を公開にて行いました。
収穫機での収穫作業
収穫機による一斉収穫を行うため、電照操作によりキクの開花期を揃えました。
実証を担当する「男鹿・潟上地区園芸メガ団地利用組合」組合長の吉田さんからは、「慣行栽培では、彼岸向けのキクの収穫は10日程度に分散されるが、電照栽培の場合は3日間程度に集約でき、しかも計画的に作業できるのでとても楽になった」と高評価でした。
一斉収穫機では、キクの倒伏を防ぐために設置したフラワーネットの回収も同時に行う事ができ、省力化につながります。
組合長の吉田さんは、「一斉収穫機を使用することで、スピーディに収穫作業ができ、身体がすごく楽になった。収穫後、すぐに調整施設に運ぶことができるので、しおれが少なく、鮮度の良い状態で出荷できる。」と評価していました。
選花ロボットでの選花作業
収穫機の公開後、出荷調整施設において、選花ロボットの公開も行われました。
通常、2~3人で行う選別・下葉掻き・茎の切り揃え・結束の作業を機械で行うため、省力化・省人化が期待できます。
また、人による選花作業は、作業者の感覚と経験により行われますが、機械では重量を元に選別するため、規格の揃いが良くなることも、大きなメリットの一つです。
第4回 日持ち試験を行いました
需要期のJA出荷所の様子
キクの需要期には、JAの花き出荷所内は、キクが入ったダンボール箱でいっぱいになります。
今年は、梅雨の長雨とその後の残暑で厳しい気象条件だったものの、男鹿・潟上地区園芸メガ団地では、需要期出荷に向けて電照栽培等に取り組んだ結果、概ね計画どおりの出荷ができました。
出荷調整作業後のキク
花は、茎や葉も商品の一部であるため、花屋の店頭に並ぶまで、茎葉の品質を劣化させないことが課題です。
また、需要期よりも前に開花した場合でも、適切に保管することで、需要期に出荷できれば、所得の確保につながります。
そこで、収穫後の品質低下を抑制する技術の確立を目指し、鮮度保持剤や包装資材の有無などの保管条件を変えて、日持ち試験を行いました。
冷蔵庫内で保管中です
条件を変えて下処理をしたキクを冷蔵庫内で保管しています。
保管後のキクの商品性を、地元の市場内にある花の仲卸会社に評価していただきました。
保管後の品質確認
冷蔵庫で2週間保管後と3週間保管後に開封し、キクの状態を調査しました。
包装資材を使用しない場合は、葉の黄化やしおれが多く見られ、品質が著しく低下していました。
一方、包装資材を使用すると、3週間保管しても開花はやや進むものの鮮度は保持され、商品性が保たれているとの評価をいただきました。
冷蔵保管後の花束日持ち試験
実際の流通では、冷蔵保管はせずに、すぐに店頭へ陳列されます。
冷蔵保管の有無が日持ちにどう影響するかを調査するため、冷蔵で2~3週間保管した後の小ギクを花束に加工して、市場内に陳列してもらいました。
品質調査中です
1週間陳列後及び2週間陳列後のキクの品質を評価してもらいました。8月の試験で、非常に暑い中となりましたが、1週間程度ならば店先に置いておいても問題ないとの評価をいただきました。
また、保管前に鮮度保持剤を処理しておくことで、葉の黄化が抑えられる傾向も見られ、今後の保存期間の拡大につながる結果が得られました。
取材協力:男鹿・潟上地区園芸メガ団地利用組合
お問合せ先
お問合せ先 | 秋田県秋田地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興班 |
住所 | 〒010-0951 秋田県秋田市山王四丁目1番2号 |
電話番号 | 018-860-3371 |
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