えだまめの産地拡大を目指して
第1回 ほ場準備作業について
JAあきた湖東では、従来転作作物として「大豆」を作付けしていましたが、より収益性が高く比較的馴染みがあり取り組みやすい「えだまめ」を新たな複合作物のメイン品目として位置づけ産地化を推進してきました。(平成22年度で栽培面積40ha)
「えだまめ」については秋田県でも日本一の産地を目指して今年度から新たな事業を推進し県内のえだまめ産地の拡大、活性化に向けて支援していることもあり、これを機に更なる産地規模拡大が各地で進められています。
特に湖東地区では、作業労働力が恒常的に確保できる集落営農組織を中心にした振興を図っており、現在では産地を支える重要な栽培拠点となっています。
今年は更に収量アップをねらうために早生系の品種のマルチ栽培を大幅に増やしました。
播種作業は4月下旬から行われます。
サブソイラ施工の様子
水田転作による排水不良の栽培ほ場が多いため、排水対策をきちんととることがえだまめの生産性向上には不可欠となります。
本暗渠を活用し、よりほ場の排水性を高めるためにサブソイラによる補助暗渠施工を推進しています。
本暗渠に対し垂直に施工します。
サブソイラ(弾丸暗渠)
これが弾丸付きのサブソイラです。
これを地中で引っ張ることにより、弾丸の大きさで地中に排水溝が出来上がります。
額縁明渠設置の様子
排水対策の一つで、ほ場周囲に深い溝を掘ることによりほ場の排水性を高めます。
この時、確実に排水溝へ溝をつなげることが重要になります。
早生系統のマルチ栽培の推進
早生系は培土をしないので、雑草対策、水分保持、地温維持の為に黒マルチを使用します。
今年、湖東地区では40haのうち8haがマルチ栽培になっています。
えだまめの播種作業は4月下旬から6月まで随時行われます。
地下かんがいシステムの仕組み
地中にある暗渠管にかんがい用水を流し地下から作物に水分を供給する方法です。
地下水位は、水尻の水位調節器で調節します。
すでに暗渠排水設備が整備されているほ場では、注水施設、地下水位調節器、補助暗渠(モミガラ暗渠)を追加することで簡単な操作でかん水できる「地下かんがい」を行うことができます。
本年度、井川町の(農)つかまファームのほ場で試験施行されています。
用水の注入施設
ここから用水をシステムに引き込んで使用します。
地下水位調節器と水閘(すいこう)
水位調節器により適切な位置に水位を調節します。暗渠の開閉は水閘により行います。
モミガラ暗渠施行後の様子
モミサブローにより本暗渠に対して垂直にモミガラ暗渠を施工しました。
本暗渠による排水効果を高めると共にかんがい時は、水分が作物の根に届きやすくします。
取材協力:JAあきた湖東野菜部会えだまめ生産者 さん
第2回 えだまめの安定生産を図る技術
JAあきた湖東では、従来転作作物として「大豆」を作付けしていましたが、より収益性が高く、比較的馴染みがあり取り組みやすい「えだまめ」を新たな複合作物のメイン品目として位置づけ、産地化を推進してきました。(平成22年度で栽培面積40ha)
平成23年度からは、「えだまめ日本一総合推進事業」により、秋田県が日本一産地を目指した産地拡大と活性化に向けた支援を行っており、更なる規模拡大が各地で進められております。
特に湖東地区では、作業労働力が恒常的に確保できる集落営農組織を中心とした振興を図っており、現在では産地を支える重要な栽培拠点となっております。
今年は早期出荷の安定生産を目指して、極早生~早生系を中心にマルチ栽培や不織布のべたがけ栽培面積が大幅に増加しており、その面積は全栽培面積の約1/3になっております。また、籾殻補助暗渠の施工による、排水対策にも力を入れており、県内唯一の地下かんがいシステムによる栽培ほ場もあります。
早期作型安定生産の基本はマルチ栽培
生育初期の地温と水分の確保により、マルチ栽培ほ場では発芽率が向上し、品種ごとの単収も安定しました。
プラスαで生育を促進する不織布のべたがけ
マルチ+不織布のべたがけ(トンネル鋼管等を使わないで直接マルチの上にかける)により、夜間との気温格差も縮まり、生育は一層安定。
ただし、かけ過ぎには注意し、6月になる位まで使用。
不織布とは
繊維を3次元に貼り合わせた資材。通気性のある和紙の様な質感で、防霜、保温、発芽促進、防虫、防鳥に対して高い効果が期待できます
降雨後の暗渠からの排水状況(弾丸暗渠施工区)
6月下旬の大雨の翌日の状況です。暗渠管から勢い良く水が流れており、排水状況が良いことがわかります。
弾丸暗渠
弾丸様の鉄塊を深さ約30㎝程度のところに、本暗渠と直交する方向に2~5mの間隔の水道を作ります。また、同時に心土も破砕し、耕盤などの密な不透水層を破砕し大きな間隙を作ります。
降雨後の暗渠の排水状況(地下かんがい施工区)
地下かんがいを施工したほ場では更に勢い良く水が流れています。一層排水条件が改善されている事が予想されます。
地下かんがい
地下かんがいを施工したほ場では更に勢い良く水が流れています。一層排水条件が改善されている事が予想されます。
開花・結実の状況(弾丸暗渠施工区)
7月20日、すでに結実が開始しています。分枝数はやや少なく、開花はすぐ終わりました。
分枝
えだまめの主枝の葉のつけ根のところから出る枝。多ければ開花数が更に増加し、収量性も向上します。
開花・結実の状況(地下かんがい施工区)
同日(7月20日)の状況です。こちらは分枝数も多く、まだ開花中の花が見えます。
収穫時の株の状況(弾丸暗渠施工区)
着莢数は少な目で、株の太り、根の充実も今ひとつです。
干ばつ、集中豪雨を繰り返した今年の天候の影響を感じます。
収穫時の株の状況(地下かんがい施工区)
分枝数も多く、着莢も多くなっています。弾丸暗渠のみの区に比べて茎も太く、根の量も多くなっています。
地下かんがい施工ほ場の野菜栽培は、排水対策の改善による収量・品質の向上効果が期待されます。
一方、猛暑が続くここ数年の気象条件下では、地下からのかん水の効果も見逃せません。本年地下かんがいほ場では、6、7月の干ばつ時を中心に数度のかん水を行いましたが、このことにより生育状況が改善され、上記のような生育差がつきました。籾殻補助暗渠等の排水対策に加え、適切なかん水による生育促進の重要性が改めて示された結果といえます。
取材協力:JAあきた湖東野菜生産部会
第3回 えだまめ100日出荷への取り組み
JAあきた湖東では、従来転作作物として「大豆」を作付けしていましたが、より収益性が高く、比較的馴染みがあり取り組みやすい「えだまめ」を新たな複合作物のメイン品目として位置づけ、産地化を推進してきました。(平成24年度で栽培面積50ha)
平成23年度からは、「えだまめ日本一総合推進事業」により、秋田県が日本一産地を目指した産地拡大と活性化に向けた支援を行っており、更なる規模拡大が各地で進められています。特に湖東地区では、作業労働力が恒常的に確保できる集落営農組織を中心とした振興を図っており、現在では産地を支える重要な栽培拠点となっています。
出荷期間は7月下旬から10月上旬が主体ですが、出荷時期の前進化と安定出荷、9月の出荷量確保が課題となっています。そのため、平成22年から極早生~早生系を中心にマルチ栽培や不織布のべたがけ栽培を拡大しています。また、9月出荷となる県オリジナル品種の作付を推進しているほか、9月中下旬に収穫できる新たな良食味品種「秋農試40号」の現地実証も行っており、100日間の安定出荷体制を目指しています。
早期作型はマルチ栽培に不織布べたがけ
4月から5月中旬までに播種される極早生~中早生品種では、マルチ栽培で初期生育の確保に努めています。
平成23年から県、JAによるマルチへの助成も行われており、今年はマルチ栽培が全栽培面積の4割近くになりました。
さらに生育を促進する不織布べたがけの併用も増加しています。
収穫間近の極早生種
4月22日に播種したほ場(品種は一力)の収穫間近の様子です。マルチ栽培に不織布のべたがけを併用しました。発芽勢、発芽揃いが良く、その後の生育も順調でした。
7月17日からは収穫が開始され、単収は500㎏と良好でした。
乾燥時のかん水対策
今年は高温乾燥が続き、多くのほ場で生育が停滞したため、用水からの掛け流しや、本来排水のために設置した明渠を介してのかん水も行われました。
開花期の秋農試40号
6月5日に播種し、7月末に開花期となった秋農試40号の様子です。
秋農試40号とは
秋田県農業試験場が県内の在来種を親として育成した、9月中下旬に収穫出来る食味の良い品種のこと
収穫期の秋農試40号
収穫間近の秋農試40号です。収穫期は9月20日でした。
※同日に播種したあきた香り五葉は9月11日に収穫となりました。
秋農試40号の収穫株
収穫された秋農試40号の株です。収量はあきた香り五葉と比較して135%となりました。食味も良く、9月中下旬に収穫できる品種として期待されます。
選果作業と出荷前の枝豆
JAでの共同選果の他、法人等の大規模生産者は個別に選果・調整作業を行っています。鮮度保持フィルムの袋に詰められ、十分に予冷されてから首都圏他の各市場へ向けて発送されます。
産地拡大の推移
枝豆生産に取り組みはじめた平成16年度以降、栽培面積、販売量は年々増加しています。平成24年度には出荷面積50haとなり、さらなる拡大が期待されます。
取材協力:JAあきた湖東野菜部会えだまめ生産者
お問合せ先
お問合せ先 | 秋田県秋田地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興班 |
住所 | 〒010-0951 秋田県秋田市山王四丁目1番2号 |
電話番号 | 018-860-3371 |
FAX番号 | 018-860-3363 |