「あきたこまちR」がよく分からない?放射線育種なの?安全性は?などについて、分かり易く解説するよ。

小町さん
秋田さん

(1)「あきたこまちR」について 

「あきたこまち」は、全国の消費者から長年親しまれてきた米だけど、今度、「あきたこまちR」という品種に替わるって本当なの?

そうなんだ。令和7年から「あきたこまちR」に切り替わる予定だよ。

「あきたこまちR」ってどんな米なの?

 秋田県はもともと鉱山が多かった地域で、そこから流れ出た重金属のカドミウムが田んぼに蓄積されたところがあるんだ。そこで米を栽培すると、特に田んぼが乾いたときにカドミウムが吸われて米粒に少し入ってしまうことがあるんだけど、「あきたこまちR」はほとんどカドミウムを吸わない品種なんだ。

今までは、稲の穂が出てくる時期に長期間田んぼに水を入れたままにすることで、カドミウムを吸わないようにしてたんだけど、そうした管理が不要になるんだ。

カドミウムを吸わない以外は、今までの「あきたこまち」と味や特徴はほとんど同じなんだよ。

(2)「放射線育種」について(コシヒカリ環1号)

実は、友達から聞いたんだけど、「あきたこまちR」の先祖の品種「コシヒカリ環1号」は放射線を照射して品種改良したんだって?安全性に問題はないのかな?

「コシヒカリ環1号」は、「コシヒカリ」の種子に1度だけ放射線を照射して突然変異を誘発し、カドミウムをほとんど吸わない株を、6世代以上栽培し、選抜を繰り返し育成された品種だよ。

放射線育種は、50年以上も前から多くの農作物の品種改良に使われてきた一般的な品種改良の方法で、自然界でも起きる突然変異を効果的に利用できる手法なんだ。「コシヒカリ環1号」は、人体に有害な放射線を発することはなく、安全なものなんだよ。

「あきたこまちR」は、その「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」を交配した株に、さらに7回も「あきたこまち」を交配してできた500株の中から、「あきたこまち」と味や特徴が同等で、カドミウム吸収性が極めて低い株を選抜した、「交配育種」による品種なんだよ。

もちろん、遺伝子操作した米ではないから有機栽培としても認められるし、例えばEUなどにも有機農産物として輸出できるんだ。

「放射線育種は50年以上も前から使われてきた一般的な品種改良の方法」なの? これまで作られたものにはどんな農作物があるの? 普通に食べられているの?

放射線育種により品種改良された主なものとしては、米では冷害に強い「レイメイ」や倒れにくい「北陸100号」、大豆では病気や害虫に強い「ライデン」があるよ。

それらを先祖にもつ品種がたくさん誕生し、長年にわたって各地域で作付けされていて、今も普通に食べられているよ。多くの人が、何十年も前から食べているけど、問題なんて報告されていないよ。

ほかにも、小麦、タマネギ、ナシ、モモ等で様々な品種が誕生し、一般的に流通しているよ。

【水稲育種の有識者(育種専門家)の御意見】
米では、1960年代に育成された放射線照射による突然変異品種「レイメイ」は最大普及面積14万ヘクタールに達し、その後代の「アキヒカリ」等とともに、一時代東北地域の主力品種として地元で消費されるとともに、大量に首都圏他各地に出荷していたと考えられる。

また、「コシヒカリ」のガンマ線照射による突然変異である「北陸100号」の後代品種「キヌヒカリ」も長年、良食味品種として栽培されている。

放射線突然変異品種の食経験は十分蓄積されており、過去にそれで問題は生じていない。

でも、「コシヒカリ環1号」の品種改良に使用した重イオンビームは、従来のガンマ線よりはるかに強いエネルギーがあり、人に照射すると危険と聞いたけど本当に大丈夫なの?

それぞれの放射線による影響の度合いが異なるから、人に照射して危険なレベルと植物への照射線量を単純に比較することは科学的に意味がないんだよ。

さらに言うと、がん治療では、全身に浴びると危険とされるレベルを超える放射線量を患部に照射し、人々の病気を治している事実もあるんだ。

【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)による御意見】
重イオンビーム照射は、強いエネルギーが集中して当たるというのはその通りである。しかし、その照射によって作出した品種が危険であることを示すデータや実験は存在していない。人体に当たると危険性は高いが、照射されて何世代も経た植物が危険であるとは科学者は考えていない。

そうなんだ。でも、自然界でも起きる突然変異と同じ効果と言うけど、自然界で起こるDNAの損傷は1本鎖だけで、重イオンビームはDNAの2本鎖とも傷つけて切断してしまうって聞いたよ。未知の毒性の強いタンパク質ができたりすることはないのかな?

自然界でもDNA2本鎖が切断されることはあるんだ。多くは元通り修復されるけど、修復ミスが起こると突然変異となるんだ。でも、これまでと異なる新たなタンパク質が作られることはほとんどないし、さらに毒性が生まれることもほとんどないんだ。仮にあったとしても、品種選抜の過程で廃棄されるしね。突然変異遺伝子を持つ米を心配するより、カドミウム濃度が高い米を減らすことの方が重要だよ。

【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)による御意見】
DNA2本鎖の2本とも損傷されることは、エネルギーが強い紫外線(UV-C)でも起こると言われている。

また、自然界には放射性の核種が多くあり、特にカリウム40は、カリウム肥料など天然のカリウムに0.01%以上含まれる。これはβ線を出すが、一部(約1割)ガンマ線も放射する。地中のあるいは植物体内のカリウム40により植物体は放射線を受けており、DNAに当たれば2本鎖切断も起こる。修復ミスが頻繁に起きて、突然変異が起こるが、突然変異が起こった植物体、あるいは突然変異遺伝子を含む品種が危険というわけではない。
【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)の御意見】
人類は、自然に起こった遺伝子の破壊によって生じた突然変異を、作物として多く利用してきた。野生植物は、脱粒性や休眠性を持っていて栽培に適さず、毒性分が多く食用に適さないものがある。このような野生植物の特性が失われたものが、作物として利用されている。自然に起こった突然変異は安全で、人為的に起こした突然変異は危険というのは誤りである。放射線育種は、突然変異の率を高めているだけである。

 (3)「あきたこまちRへの切替え」について

「切替え」ってことは、強制的に従来の「あきたこまち」は作るなってこと?作る自由はないの?なんか抵抗感があるよね。

「切替え」とは、県内の種場から供給される種子が「あきたこまちR」に切り替わるってことなんだ。

だから、自家採種したり他県から種子を買って、従来の「あきたこまち」を作付けすることはできるし、従来の「あきたこまち」であることを表示して販売することも可能だよ。

「あきたこまちR」は自家採種できないの?

うーん、それはね、できないんだ。「あきたこまちR」は自家採種をすると、品種の特性であるカドミウム低吸収性が失われる可能性があるからなんだよ。

そもそも、「あきたこまち」だって自家採種せず、毎年種子購入して栽培している農家がほとんどだよ。

カドミウムが吸収されやすい地域だけで「あきたこまちR」を作ればいいんじゃない?やっぱり切替えしなきゃダメなのかな?

これまでも、安全な米しか流通していないんだけど、今のままでは、県内の多くの地域で、稲の穂が出てくる時期に長期間田んぼに水を入れ続ける必要があるんだ。

また、海外の一部の国や地域でさらに厳しいカドミウムの基準を設定している国もあるから、今後、そのような基準に合わせて国内基準がより厳しくなったとしても対応できるように「あきたこまちR」への切替えが必要なんだよ。

さらに、米産県として海外にも販路を拡大することを考えれば必要なことなんだ。

それにね、海外の国ではヒ素の基準が決まっている場合もあるんだ。ヒ素の吸収を抑えるには、カドミウムと全く逆で、田んぼを乾かす水管理が求められるんだよ。

だから、米産県として将来を見据え、海外のより厳しい基準にも対応した米を国内外の消費者にお届けするためにも、県全域で「あきたこまちR」に切替えするんだ。

「あきたこまちR」への切替えについて、米の流通や販売に関わっている人たちはどう思っているの?

従来の「あきたこまち」よりカドミウムを吸収しないし、味も品質も変わらないから、「あきたこまちR」になっても問題ないといった声が多いよ。

それに、同じような品種が2つ流通することは混乱を招くとも言っているよ。

(4)「マンガン」について

近所の農家さんが気にしていたけど、「あきたこまちR」は、これまでの「あきたこまち」の栽培方法と同じでいいの?

稲の穂が出る時期や米粒が成熟する時期、収量や品質は「あきたこまち」と同等なんだ。基本的に、県内のほとんどの地域でこれまでと同じ栽培管理でいいんだよ。

ただし、「あきたこまちR」は、カドミウムと共にマンガンの吸収も少ないから、地力が低く「秋落ち」が認められる一部の水田では、「ごま葉枯病」が発生する場合があるので注意が必要だよ。

そのための対策はあるの?

植物は生長に必要な微量要素がなければ生育できないから、お米ができるということは、必要な量のマンガンは十分吸収できている証拠だよ。だから、全部のほ場にマンガンを入れないといけない訳ではないんだ。

一般的に、田植え時に「いもち病」対策などでも使われている農薬の種類を工夫すれば問題にならないよ。

そもそも、稲づくりの基本は「土づくり」だから、品質が高くて安定的に収量がとれるように、地力の向上に努めることが大切なんだ。

近所のお母さんが心配していたけど、マンガンの吸収が少ないということは、その米を食べるとマンガン欠乏にならないの?子供の発育に心配はないの?

マンガンは人間にとって必須の栄養素で、食べ物から摂取しているんだ。でも、米だけでなく野菜やお茶など、植物性の様々な食べ物から摂取しているから、バランス良く食事をしていればマンガン欠乏になることはないよ。

そうなんだ。ありがとう。また、解らないことがあれば教えてね!

※ これらの回答は、科学的知見及び農林水産省や学識経験者の意見を参考に作成しています。

「あきたこまちR」って何??(一問一答集)のPDFファイルはこちら

お問合せ先

お問合せ先秋田県 農林水産部 水田総合利用課 土壌・環境対策チーム
住所〒010-8570 秋田県秋田市山王4丁目1番1号
電話番号018-860-1785
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