由利沿岸の季節的な漁業
第1回 夏のイワガキ漁
秋田県の南西部に位置する由利地域沿岸は、ハタハタ、タラ、イワガキ等で有名な県有数の漁業地帯です。季節ごとに違う魚の漁が行われています。その様子をご紹介します。
イワガキの採取(潜り漁)
小舟を浮かべ、海に潜ってイワガキを採ります。
1人、1日200個までと決められています。
漁港への積み上げ
小舟が満杯になったら、港へ積み上げます。
カキ洗い
カキは数個がくっついているので、へらを使って選り分けます。
同時についている海藻や岩虫、ゴカイなどの虫も取り除きます。
選り分け、虫などを取ったカキは、水でていねいに洗います。
セリ風景
その日の午後にセリを行います。
たくさんのバイヤーが声で、指で希望価格を示して欲しいカキを競り落としていきます。
「バイヤー」とは
港でカキなどの魚介類を買っていって、大きな市場で小売業者に売る方々です。
箱いりイワガキ
この箱ごとにセリを行います。
この箱で市場に持って行きます。
他の魚もいます
他にもいろいろな魚がセリにかけられています。
いろいろな魚がいますよ。
取材協力:秋田県漁業協同組合 南部総括支所長(佐々木総括支所長) さん
第2回 秋のヒラメとカレイ
秋田県の南西部に位置する由利地域沿岸は、ハタハタ、タラ、イワガキ等で有名な県内有数の漁業地帯です。
季節ごとに違う魚の漁が行われています。
今回は秋に獲れるヒラメ、カレイの紹介です。
「左ヒラメに…… 」
小さい頃には体の両側に1つずつあった眼が、成長するにつれ、1歳前の頃から体の左側に移動します。
「…………… 右カレイ!」
カレイは逆に、右側に移動します。
ヒラメの裏側
裏、つまり右側には何もありません。
(上側が頭部)
カレイの裏側
裏、つまり左側には何もありません。
(上側が頭部)
ヒラメの口の部分の拡大図
見事に左側に2つの眼がありますね。
マコガレイです
マコガレイです。
最大45cmほどまで成長します。
マガレイです
秋田県由利地域沿岸ではその容姿から「クチボソ(口細)」とも呼ばれています。
ソウハチガレイです
こちらは、その容姿から「ブタガレイ」と呼ばれています。
ヤナギムシカレイです
こちらは、「クビ長」と呼ばれています。
30cmほど。
アカガレイです
文字どおり、赤みを帯びたカレイです。
45cmほど。
ヒレグロです
文字どおり、ヒレが黒いカレイです。
こちらも比較的、深い海に棲んでいます。
舌ビラメ
実は「ヒラメ」と名前はついていますが、ヒラメでも、カレイでもありません。
カレイ目の「ウシノシタ」科に属します。
たしかに舌に似ているでしょう。
取材協力:秋田県漁業協同組合 南部総括支所長(佐々木総括支所長、宮崎係長) さん
第3回 川袋川(かわぶくろがわ)でのサケの漁と人工養殖
秋田県の南西部に位置する由利地域沿岸は、ハタハタ、タラ、イワガキ等で有名な県内有数の漁業地帯です。
季節ごとに違う魚の漁が行われています。
今回は川に遡って(あがって)くるサケとその漁、人工養殖(人の力でサケの子どもを作ること)の様子をご紹介します。
「ヤナ」って何?
毎年9月上旬になると、サケが遡ってくる川袋川に写真1のような「ヤナ」をかけます。
左側の川下からサケが遡ってきて、中央の三角から金網の内側(右側)に入ると、もう逃げられません。
ヤナに向かうサケの群れ
サケは海から川上をめざして遡がってきます。
左上が海、右下がヤナの入り口です。
サケがたくさんだ~!
サケの遡上(そじょう)は9月下旬から12月中旬まで続きます。
10月から11月が一番多く上ります。
遡上(そじょう)
卵を産むため、生まれ育った川に遡ってくること。
サケを運びます
いけすに網を入れて、すくい上げます。クレーンを使って、サケを軽トラックの荷台に作ったいけすに入れ、近くのふ化場まで運びます。
ふ化場です!
このふ化場に運びます。右の方が作業場で、トラックをつけて、サケをおろします。
手前は事務室です。
ふ化
卵から子どもが生まれることで、「ふ化場」とはそのための建物です。
運びこまれたサケ
トラックからおろしたサケをオスとメスにより分けます。
メスから卵を採ります
メスの腹の中から卵を採ります。
残酷なようですが、こうして卵をとって、人工的にサケの子どもをふ化させて、サケの数を保っているのです。
これから成長する卵たち
精液をかけ、受精させます。
これは受精させた直後の卵です。
精液
卵を子どもに育てるために、オスから出る液。「受精」とは精液を卵にかけることです。
卵の仕分け
1ヶ月後に検卵(けんらん)を行い、死んで白くなった卵を取り除きます。
そうしないと、その卵から腐ったり、病気が拡がります。
検卵(けんらん)
卵の中に目が生まれてきているか等を確認して、育っている卵をより分ける作業です。
春までここで過ごします!
検卵を終えた卵たちは、水槽で1ヶ月半ほど過ごし、ふ化直前に写真11のいけすに移動します。
放流は2月中旬から4月上旬まで続きます。
取材協力:>生産法人 川袋鮭漁業生産組合 ふ化担当 池田 裕(ゆたか)さん
第4回 タラ漁と掛魚(かけよ)祭り
秋田県の南西部に位置する由利地域沿岸は、ハタハタ、タラ、イワガキ等で有名な県内有数の漁業地帯です。
季節ごとに違う魚の漁が行われています。
今回は秋田沿岸の冬の漁で代表的なタラ漁とタラを奉納する掛魚(かけよ)祭りについてご紹介します。
船からの荷揚げ
朝早く漁に出た船が、夕方からそれぞれ港に戻り、捕れた魚を陸に荷揚げします。
荷揚げ直後の計量
簡易な秤(はかり)で「タラ」の重さを量り、重さを書いた札を魚体に張り付けます。
量る前の「タラ」(背側)
こんな顔です。
量る前の「タラ」(腹側)
こんな腹です。
お腹が一杯のことを意味する「たらふく」は当て字で「鱈腹」と書きますが、「腹がふくれていること」や「大変な大食漢」からこの漢字が当てられたと言われています。
並べられた「タラ」
セリ場で、割り当て場所に並べられ、セリを待つタラ達。
セリ場
魚を見て、一番高い値段を示した業者が買っていく「セリ」の会場のこと。
大きな「タラ」
この日最大の「タラ」は13kgもありました。
大きいものだと15kgを超えるものも捕れるそうです。
いろいろな魚が捕れます
この時期には一回の底引き漁で、様々な魚が捕れます。
底引き漁
海底に網を下ろし、それを漁船で引きずって魚を捕る漁です。
「サメ」もいます
これは「アブラツノザメ」という種類で、由利沿岸では新鮮なものは刺身で食べられており、焼いて食べてもおいしいです。
「タコ」もいます
「タコ」も大きなものが捕れます。
「ズワイガニ」もいます
捕れる地域により「松葉ガニ」、「越前ガニ」とも呼ばれる高級食材ですが、秋田県沖でも捕れるんですよ。
「毛ガニ」もいます
秋田県沖でも「毛ガニ」がいるんですね。秋田県人もびっくり!
「甘エビ」もいます
一年中捕れますが、冬場が旬でおいしいです。
「ガサエビ」もいます
テレビや雑誌でしばしば取り上げられる、幻のエビです。
生でもおいしいですが、当地方では塩焼きが一般的な食べ方です。
ガザエビ
標準和名:クロザコエビ
セリの準備です
大方の船の荷揚げが終わると、船ごとに魚を並べて、購買人が見やすいよう、買いやすいように並べ、セリの開始を待ちます。
掛魚(かけよ)祭りの準備です
漁港に集められた「タラ」は、このあと1つずつ町内を練り歩き、金浦山(このうらさん)神社に奉納されます。
腹側の写真です
大きな魚も捕れました
子どもたちもびっくりの大きな「オオクチイシナギ」です。
体長170cm、重さ91kgもありました。2~3年に一回捕れるか捕れないかの「幻の大魚」です。
奉納します
神社に奉納するために、神社への坂を順番に持って上がります。
神社の境内
たくさんの人が押し寄せ、左側に下げられている「タラ」が見えません。
掛魚(かけよ)祭り会場です
神社のすぐ下の勢至(せいし)公園では、この日に合わせ、「タラ」をメインとした祭りが開催されます。
「たら汁」の販売コーナー
おいしい「たら汁」が振る舞われています。
やっと順番がきたぞ!
長い行列のあと、温かい「たら汁」で凍えた体を暖めます。
取材協力:秋田県漁業協同組合 南部総括支所 (佐々木総括支所長) さん
春の放流に向けて稚魚が順調に育っています
川袋川(かわふくろかわ)鮭漁業生産組合が昨年11月から12月にかけて採卵、受精したサケの稚魚が、順調に育っています。このふ化場では600万尾がふ化しました。
本格的な放流は3月中旬からですが、2月9日、16日、24日に調整放流(※)が行われました。
この稚魚は4年後の秋に川袋川に戻ってきます。
※調整放流とは
ふ化した稚魚は水槽の中で育ちます。しかし、稚魚が大きくなってくると水槽が手狭になってくるので、稚魚が快適に成長できるように、本格的な放流の前に稚魚の数を調整するために放流を行います。
ふ化間近の卵と稚魚です(H21.1.20)
まだふ化していない卵には眼がみえています。
ふ化した稚魚は網の目をすり抜け下に落ちます。
ふ化直後の稚魚です(H21.1.20)
石の間でじっとして卵のうの栄養で成長します。
稚魚が無駄な動きをしないように水流を調整しています。
卵のう
稚魚の腹部にある栄養が入った袋状のもの。稚魚は約50日間この栄養で成長します。
ふ化が続いている水槽の内部です(H21.1.20)
両側の青い網の上でふ化し、網の目をすり抜け下の砂利の間に移動します。
ふ化が続いている水槽の全景です(H21.1.20)
フタをしている水槽はふ化直後かふ化が続いている水槽です。
手前の水槽はふ化後10日です。
ふ化後55日~60日の稚魚です(H21.1.20)
この稚魚は昨年10月8日に採卵、受精したものです。
エサ与えています(H21.1.20)
卵のうの栄養が無くなってくる頃からエサを与えます。
エサは配合飼料です。
調整放流する稚魚です(H21.2.24)
この稚魚は、ふ化後90日、重さは1.3グラムくらいです。
調整放流です(H21.2.24)
網で稚魚をすくい取り、ザルにすくい計量します。
その場で放流します。
この日は15万尾が放流されました。
水路を下り、川袋川に入ります。
サケとばをつくっています(H21.2.24)
道の駅「象潟」の農林水産物直売所などで販売しています。
サケとば
サケの干物
サケとばです(H21.2.24)
とても美味です。あぶりたては旨さがアップします。
川袋川です(H21.2.24)
右が「川袋川」、左が「川袋小川」です。
鳥海山から流れ出でる清流です。
川袋川の河口です(H21.2.24)
この小さな川に秋には4万尾を超えるサケが戻ってくるようになりました。
今回の情報は、2007年12月に掲載した由利沿岸の季節的な漁業(3回)の「川袋川での鮭の漁と人工養殖」の続きです。サケの遡上の様子はそちらをご覧下さい。
4月上旬には、地元の小学生による稚魚の放流が行われます。
取材協力:生産法人 川袋鮭漁業生産組合 組合長理事 池田 甚一 さん
お問合せ
お問合せ先 | 秋田県由利地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興チーム |
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