表彰 担い手 農業 能代市

 令和3年度(第105回)農事功績者表彰・緑白綬有功章〔野菜部門〕を受章した工藤巌さんの功績を紹介します。

1 農事改良等の実績

 土作りの徹底や機械化一貫体系の導入、収穫時期の前進化等により経営規模を拡大した。また、JAねぎ部会内で徹底した品質管理を行う体制を構築し、「白神ねぎ」のブランド力強化に貢献した。

① 平成8年~平成10年(兼業農家として就農)

  • 平成5年をピークに米価は下落を続け、農業所得が減少していた中で、親の代から引き継いできた特産のミョウガについても産地内で土壌病害が蔓延して生産量が減少するなどの打撃を受け、地域には悲壮感が漂っていた。
  • そうした中、工藤氏はJAに勤務する傍らで、平成8年から農業経営を開始し、「稲作に頼らない、園芸品目中心での経営確立」を目標に掲げ、価格が安定し機械化が急速に進んでいたねぎに着目し、20aの試験栽培から生産を開始した。

② 平成11年~平成16年(機械導入による作業の省力化と経営規模の拡大)

  • 平成11年、工藤氏はJAを早期退職して専業農家となり、水稲にねぎ、山うどを加えた周年農業の取組を始めた。作付体系の工夫と効率的な収穫・調製作業の実践により、工藤氏はねぎの作付面積を当時の平均作付面積約45aを大きく上回る2haまで拡大し、周囲のねぎ農家を驚かせた。
  • 平成13年には農業経営改善計画の認定を受け、土寄せ、病害虫防除、収穫、出荷調製作業の機械化に取り組み始めた。
  • また、ミョウガの土壌病害の教訓から、排水対策と土作りを徹底することで、規模拡大と収量・品質の確保を両立しながら、水田でも畑地と同等のねぎ栽培が可能であることを実証した。ねぎの収穫期と重複する作業を低減するため、次第に水稲と山うどの作付規模を縮小し、ねぎへの作付転換を更に進めた。
  • こうしたねぎの規模拡大の実績が認められ、平成17年、JAねぎ部会長に就任した。

③ 平成17年~平成22年(JAねぎ部会長としてブランド力強化に大きく貢献)

  • ねぎの機械化が進む中、ほとんどの農家はチェーンポット育苗による移植作業を行っており、苗の供給に大きな労力を割いていた。工藤氏は、周囲に先駆けてねぎ全自動移植機を導入し、移植作業の省力化を実証するだけでなく、セル苗の育苗管理技術を部会員と共有することで、全自動移植機による省力化技術の普及促進に貢献した。
  • また、従来の栽培体系では、夏どりねぎの収穫開始が8月からであり、規模拡大や収益確保に向けて、収穫時期の前進化が課題となっていた。工藤氏は、農業試験場や普及員と連携し、既存の作型より2週間早く収穫できる「越冬大苗7月どり作型」を実践し、技術確立に大きく貢献した。
  • この他にも、転作田の排水対策を強化してねぎの作付拡大を図るために、簡易暗渠と額縁明渠を春作業の短期間に施行できることを農機メーカーと共同で実証したほか、「植え溝施肥法」を導入して追肥作業の省力化と単収向上を図るなど、栽培技術の改良・普及に尽力した。
  • 当地域のねぎは、工藤氏が部会長に就任した当時から「白神ねぎ」としてブランド化されていたが、市場からの評価は芳しくなかった。この原因は、規格ごとの仕分けが不十分で、上位規格品に規格外品が混入しているなど、農家による選別の甘さにあった。
  • そこで工藤氏は、部会内において抜き打ちの品質検査を週1回実施することとし、部全体の品質に対する意識改革を図るとともに、出荷基準に満たないねぎを出荷した農家にペナルティを科すなど、出荷規格を厳格化した。こうした取組が功を奏し、「白神ねぎ」の市場評価は徐々に高まり、ブランド力の強化に繋がった。

④ 平成23年~現在(産地への技術普及と経営継承)

  • 工藤氏は、ねぎ部会長を勇退した後も顧問に就任し、会員の技術向上のために品質検査の徹底や育苗・栽培管理技術の指導に尽力する等、産地への技術普及に貢献し続けている。
  • 自らの経営においては、平成29年に長男が本格的に就農したことを契機に、更なる規模拡大を目指して、ねぎ調製施設の整備や生産機械の導入を行った。補助事業の活用にあたっては、長男を事業実施主体にして経営者としての自覚を促すきっかけを作り、平成30年には長男が代表取締役を務める株式会社を設立した。工藤氏は会社の会長に就任して、技術・経営の継承を進めている。

2 地域農業発展等への貢献

 JAねぎ部会長として産地の拡大や機械導入の促進に貢献した。また、秋田県指導農業士や土地改良区理事などを務め、担い手育成や農地の維持保全など地域農業の発展に尽力している。

① 「白神ねぎ」のブランド確立と産地の拡大に貢献

  • 工藤氏がJAねぎ部会長として産地を牽引するリーダーとなり、土作りや新たな栽培体系の実証、機械導入を推進した結果、白神ねぎの販売額は、平成17年の5.5億円から平成22年の9.6億円へ大きく増加した。
  • また、地域で整備された園芸メガ団地では、工藤氏の機械化一貫体系、長期どりの栽培体系を取り入れ、整備後1年目から販売額1億円の目標を達成した。これが起爆剤となって産地の拡大が更に進み、令和2年度にはJA販売額が17億円を突破した。

② 秋田県指導農業士として担い手の育成に大きく貢献

  • 工藤氏がねぎ栽培における新型機械や新しい栽培体系をいち早く導入し、そのメリットを部会員に紹介したことで、速やかな技術普及が図られた。
  • また、新規にねぎを栽培する農家に対する指導を率先して行い、技術レベルのボトムアップに尽力したほか、秋田県指導農業士として若手農業者に自身の技術を継承するなど、地域の農業振興や後継者育成に大きく貢献している。

③ 地域農業の振興と農村環境の保全に貢献

  • 能代地区土地改良区理事として、用排水施設の管理や農地の維持保全を担い、地域農業の発展を下支えしている。
  • また、久喜沢地域資源保全隊の代表として、農道の草刈りや水路の泥上げ、コスモスの植栽による景観形成等の活動においてもリーダーシップを発揮し、農村環境の保全に貢献している。

お問い合わせ先

お問合せ先秋田県 農林水産部 農林政策課 企画・広報チーム
住所〒010-8570 秋田県秋田市山王4丁目1番1号
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