令和5年度(第107回)農事功績者表彰・緑白綬有功章〔畜産部門〕を受章した柴田輝男・誠子夫妻の功績を紹介します。

1 農事改良等の実績

 牛群検定事業にいち早く取り組み、泌乳能力の高い牛群を整備。

 また、遊休農地等を活用した自給飼料生産や過剰投資を抑制した施設機械の整備等により、健全な経営を実践。

 さらに、家族全員が意欲的に働くことができる環境を整え、後継者育成にも注力するなど、本県におけるモデル的な酪農経営を実現。

①昭和40年~46年(酪農経営技術の習得)

 輝男氏は、父ら5名が設立した農事組合法人に就農し、酪農に従事。

 乳用牛の飼養管理と牧草の生産管理に関する技術を習得。酪農経営にとって、自給飼料となる粗飼料生産の重要性を認識。

②昭和45年~現在(経営状況の把握)

 誠子氏は、就農当初より作業日誌や簿記の記帳を継続しており、自ら税務申告を実施。記帳結果を基に畜産コンサルタント診断指導を受診し、経営状況を把握。夫婦で経営方針を決定しながら堅実な経営に取組。

②昭和47年~現在(高泌乳牛群整備への取組)

 同法人の分割に伴い、父から経営移譲を受け、柴田牧場として誠子氏とともに経産牛8頭、育成牛7頭の酪農と水稲による複合経営を開始。

 酪農部門の拡大とともに、昭和50年から始まった牛群検定事業にいち早く参加し、検定成績の分析結果をもとに泌乳能力の高い牛群を整備。

 こうした取組の結果、第6回全日本ホルスタイン共進会から連続して7回出品するなど高能力な牛を育て上げ、それらの後継牛は県内はもとより県外でも活躍。

③昭和47年~現在(自給飼料生産基盤の確立による生産コスト低減)

 経営基盤の柱の1つとして粗飼料生産に重点を置き、計画的な草地更新と肥培管理の徹底により、良質な粗飼料を確保。

 飼養頭数の拡大過程では、稲作農家と連携して飼料用稲を確保するだけでなく、遊休農地を積極的に活用し粗飼料を生産するなど、生産コスト低減を実現。

 平成10年には離農跡地の活用により草地面積を39haに拡大。

④昭和47年~現在(投下資本の抑制)

 牛舎等の施設は、経営移譲を受けた当時の施設をベースとし、古材等を活用して自力で改築や増築を行い、規模を拡大。

 また、融資制度や補助制度を有効に活用し、昭和56年には農業近代化資金により40頭規模の搾乳牛舎を整備。機械器具や車両についてもできるだけ長く使用するため保守管理を徹底。

 これらの取組により健全な経営を実現。

⑤昭和57年~令和元年(障害者の雇用受入れ)

 地元の心身障害者支援施設の入所者を積極的に受け入れ、入所者の自立、社会参加に向けた支援を実施。

 毎年常時2~4名を受け入れ、最も多かった昭和60年は9名を雇用。

⑥平成11年~現在(家畜個体識別への取組)

 県が平成11年度から家畜個体識別モデル事業に取り組み、牛群検定事業と連携させた個体管理を全国に先駆け実施。

 輝男氏は、県内においてこのモデル事業の耳標装着にいち早く取り組み、牛群の改良と併せ、牛の正確な個体情報を流通・消費者段階まで提供。

⑦平成12年~現在(経営基盤の確立と後継者育成)

 平成12年に酪農専業となり、現在では搾乳牛70頭、育成牛30頭まで飼養頭数を拡大。

 後継者である二女の就農に伴い、平成15年には家族経営協定を締結し、家族全員が意欲的に働くことが出来る環境を整備。

 平成17年に二女の夫が就農すると、段階的に名義変更を行い世代交代を図るなど、後継者育成にも注力。

 平成27年に柴田牧場の開場50周年を機に農事組合法人新林牧場を設立し、代表理事には二女の夫が就任。

2 地域農業発展等への貢献

輝男氏は、秋田県酪農家のリーダーとして、牛群検定事業の普及を通じ、酪農経営の向上に貢献。

 また、誠子氏とともに食農教育や後継者育成に尽力。

 さらに、両氏はイベント開催や直売などに積極的に携わり、地元農畜産物等を県内外にPRするなど、本県農畜産業の活性化に貢献。

①秋田県酪農家のリーダーとして本県酪農を牽引

 輝男氏は昭和50年に始まった牛群検定事業に自ら参加するとともに、秋田県酪農全体の底上げを目指し、全戸参加に向け尽力。

 牛群の改良により乳量や乳質の改善のほか、経営の向上に貢献。

 平成15年からは秋田県酪農連盟会長に就任し、県や農業団体等へ酪農振興施策の充実に向けた積極的な活動を行い、秋田県の酪農振興に尽力。

 こうした活動により、乳用初妊牛導入への助成事業等が創設されるなど、酪農後継者等の経営規模の拡大を後押し。

 また、平成30年には日本酪農政治連盟の副委員長に就任し、全国の酪農振興に尽力。

②次代を担う人材の育成

 輝男氏が北海道の牧場で研修を受けた経験から、昭和47年に経営主となってから現在まで、県内外の高校、大学等から研修生を積極的に受け入れ、次代を担う後継者や新規就農者の確保・育成に尽力。

③体験学習・消費者交流会の実施

 輝男氏と誠子氏は、子供たちに食と農への関心を深めてもらうため、昭和60年から地域の保育園児や小中学生を対象に搾乳などの体験学習を実施。

 また、平成元年の春から、牧場で菜の花まつりを開催するなど、消費者との交流を通じて、地産地消や地域農業への理解醸成に貢献。平成21年には酪農教育ファームの認証を取得。

④牛飼い女性の交流を促進

 誠子氏は酪農以外の仲間とも連携を図りながら、地域を越えた交流や仲間づくりに取り組み、女性の活躍を牽引。平成27年には地元由利本荘市を会場とした「第8回モーモー母ちゃんの集いinあきた」開催の中心メンバーとして大会運営に尽力。

 また、令和3年には、全国畜産縦断いきいきネットワークの会長に就任し、新型コロナ情勢下、リモートによる大会を実施。

 全国の畜産に携わる女性らの交流や情報交換を推進し、より魅力ある畜産の実現に貢献。

⑤「儲かって、楽しめる酪農」の実践と普及

 誠子氏は「儲かって、楽しめる酪農」を目指しており、その一貫として海外視察研修を企画し、ニュージーランド、カナダ、アメリカの先進的な酪農経営の現場をを視察。

 この研修には、JA酪農女性部会員や青年部会員らが多く参加し、研修で得られた幅広い視野でそれぞれの経営を確立。

⑥イベント、直売等を通じた地域農畜産物のPR

 輝男氏は、平成20年に地元銘柄牛「秋田由利牛をまるごと味わいつくす会」の実行委員長として秋田由利牛の消費拡大と地域の畜産の盛り上げに尽力。

 この会は、回を重ねるごとにチケット入手が困難になるなど好評を得ており、県外でも開催し、秋田由利牛のほか秋田県の農畜産物のPRと消費拡大に貢献。

 平成21年には国道7号沿線に直売所「輝爺」(てるじい)を開店。

 地元の農畜産物をメインに陳列しており、クチコミで評判が広がり、地域農畜産物のPRに貢献。

⑦生産資材等の供給会社を設立

 輝男氏は、地元の酪農家などに農業生産資材をできるだけ安価に供給することを目的に合同会社イーラップを設立。

 ラップフィルムや粗飼料等の販売のほか、直売施設の運営を通じて、地域農業の発展・振興に貢献。

お問い合わせ先

お問合せ先秋田県 農林水産部 農林政策課 企画・広報チーム
住所〒010-8570 秋田県秋田市山王4丁目1番1号
メールアドレスinfo@e-komachi.jp
電話番号018-860-1723
FAX番号018-860-3842

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