ふるさと秋田農林水産大賞の受賞者の業績を紹介します。

・令和3年度ふるさと秋田農林水産大賞(担い手部門・未来を切り拓く新規就農の部) 株式会社 細谷農PROJECT

1 経営発展の経過

●平成27年

 代表の細谷亮太氏は、帰郷後、将来の独立自営就農を見据え、指導農業士である父・雅春氏の元で夏秋トマトの栽培技術習得を開始した。

 農業従事経験はなかったが、県主催の次世代農業経営者ビジネス塾を受講し、将来に向けたビジネスプラン作成など経営管理手法を学んだ。

●平成28年

 細谷氏は、青年等就農計画の認定を受け、認定就農者として施設でのトマト栽培を開始した。

 この年から新規就農者経営開始支援事業を活用し、栽培ハウスや養液土耕栽培設備の導入を進めた。

●平成29年

 対外的な信用向上と、安定した雇用の確保により、地域の活性化に寄与する組織を作りたいとの考えから、法人経営への移行を検討し始めた。

●平成30年~

 友人と2人で、「株式会社細谷農PROJECT」を3月に設立し、法人経営に移行した。

 法人設立以降も農業夢プラン応援事業等を活用し、計画的にハウスの規模拡大を進めている。

 現在、ハウス面積は4,200㎡まで拡大し、地域内でも大規模な経営体として成長している。

2 経営内容

(1)野菜専業の法人経営

 夏期はトマトを主体に、冬期は後作として、ほうれんそう、リーフレタス、アスパラ菜などの葉物野菜を導入し、周年の施設利用体系を構築している。

 最近は、更なる経営発展を目指し、トマトと労働力が競合せず11月に収穫可能な露地ネギを導入し、野菜専業経営を実践している。

(2)夏秋トマトの高単収技術の確立

 父親から継承した篤農技術をベースとし、養液土耕と隔離床栽培技術を就農後の短期間に習得し、トマト部会の中でもトップレベルの高単収を実現している。

 平成30年度にはJA秋田おばこトマト部会新人賞を、令和元年度にはJA園芸生産者全体のグランドチャンピオン賞を獲得している。

 また、直近の単収は18トン/10aとなり、県内の夏秋トマトとしてはトップクラスの収量を確保している。

鈴なりに着果しているトマト

(3)経営の現状

3 消費者や実需者のニーズに対応した取組

(1)トマトの長期出荷

 トマトは主に、JAを通じ卸売市場へ出荷している。

 産地の評価向上のため、長期安定出荷体系の構築が重要と考え、部会員の中で最も長い6月中旬から11月下旬までの出荷を実現している。

(2)JA直売所や量販店インショップ向けの販売

 通常の市場流通に適さない規格外品も一定量出るが、当法人では、JA直売所や量販店インショップ向けに、リーズナブルな価格設定の「お得なパッケージ」として販売しており、人気商品となっている。

 また、トマト後作の葉物は、地場産として量販店インショップで販売している。

4 技術紹介

(1)収穫果房数の確保による長期出荷

 一般に、夏秋トマトの収穫盛期は7~8月で、9月以降は収穫量が減少するため、高単収を達成するには秋の収量をいかにして確保するかが課題となる。

 そのため、6月末から7月初旬に主枝更新や摘花管理を行い、収穫期後半の樹勢維持を図ることで、9月以降の収量を確保し、6月中旬から11月下旬までの長期出荷を実現している。

 限られた期間内で、収穫可能な花房数を多く確保するため、当法人では、主枝の中盤以降から数本の側枝を伸ばし、主枝に加えて側枝にも着果させている。

 主枝1本仕立ての場合、トマトの収穫段数は15段が限界となるが、当法人では、20段確保を目標としており、その技術は極めて高いレベルにある。

収穫作業中の細谷代表

(2)養液栽培技術の確立

 父から受け継いだ篤農技術をベースに、試行錯誤して独自の養液土耕栽培技術を確立している。

 養液栽培システムを導入し、1回の灌水時間、灌水間隔、液肥濃度等を設定し、複数のハウスに自動で液肥を給液できるようにしている。

 なお、土壌分析を毎年実施し、基肥は初期生育に必要な最小限に留めており、生育期間中は天候や生育診断結果に基づいて、液肥濃度や灌水量を決定している。

 また、本システムには給液履歴が一定期間記録されており、管理の振り返りのほか次年度の管理計画作成にも役立てている。

灌水施肥を自動で行う養液栽培システム

(3)ICT機器を活用したデータに基づく判断

 トマトの単収を確保するには、栄養生長と生殖生長のバランスをとりながら、長期間にわたり樹勢を維持して収穫を継続することが重要となる。

 このため、栄養状態の変化を判断する観察眼と、適切な対応を可能とする篤農技術を、長年の経験により培うことが求められてきた。

 トマトの栄養状態を確認する手法として、葉柄汁液の硝酸イオン濃度を目安に、追肥量を決定する技術が開発されている。測定機器を必要とするため実践する農家は少ないが、当法人では硝酸イオン濃度を定期的に測定し、生育状況の観察と合わせて、液肥濃度や灌水量の判断に活用している。

 また、温度などのほ場環境をモニタリングするシステム「みどりモニタ」を導入し、センサーや定点カメラを施設内に設置しており、自動計測された温度や湿度/飽差、EC、土壌水分等のデータがクラウド上に保存され、パソコンやスマートフォン等の端末で、いつでも閲覧可能となっている。

 このように、栄養診断の数値や、環境モニタリングデータを総合的に判断しながら、データに基づく栽培管理を実践している。

各種センサーが接続されたICTシステム
スマートフォンのモニタリング画面

(4)施設トマトの管理省力化

 施設トマトの管理は、機械化の余地がほとんどなく人手がかかるため、作業の効率化を図り、できる限り労働力を低減することが重要である。

 そこで当法人は、栽培管理の省力化のために「斜め誘引Uターン」仕立て法を採用し、人手のかかる収穫、選別、着果ホルモン処理等の作業に労働力を投入している。

(5)徹底した観察眼に基づく先を読む管理

 栽培管理の面で最も重要なことは、「作物を観察すること」との思いから、従業員には生育の変化や病害虫の発生状況を常に意識して観察するよう話しており、朝礼時に全員で情報共有することを徹底している。

 これにより、生育変化に応じた適切な管理を積み重ねることができ、安定した収量確保を達成している。

5 その他特記事項

(1)人材育成と産地拡大

 当法人が企業として成長するため、「人材の育成」が重要と捉えている。細谷代表と同じレベルの技術を持ち、栽培管理の判断能力を有する社員の育成を当面の目標として、技術伝達を図っている。

 将来的には、技術習得した社員が地域内で独立することで、産地規模拡大へ貢献したいと考えている。

 また、市内の新規就農者研修施設の研修生の視察を受け入れ、就農希望者へ助言する等、若手就農者育成にも尽力している。

高単収技術を習得中の社員

(2)中小キラリ農家全国第3位にランクイン

 週間ダイヤモンド2021.3.21号「特集儲かる農業2021」中小キラリ農家ベスト20ランキングにおいて、単位面積当たりの売上高の高さなどが高評価となり、全国3位にランクインした。

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