山間地でも若者が夢を抱く農業生産を!~農事組合法人 あきのみや~
ふるさと秋田農林水産大賞の受賞者の業績を紹介します。
令和3年度ふるさと秋田農林水産大賞(担い手部門・経営体の部) 農事組合法人 あきのみや
※農林水産大臣賞も同時受賞!
1 経営発展の経過
●平成19年
品目横断的経営安定対策が今後の農政の大きな潮流になると考え、共同での水稲防除を目的とする「上入会営農組合」を発足させるとともに、5年後の法人化を目指すことで基本合意した。
●平成22年
発起人を中心とした努力が実り、参加農家22戸で「農事組合法人あきのみや」が設立され、農作業全般の受託を開始した。
●平成26年
法人の発展と構成員の待遇改善を目指し、給料制を導入し、社会保険に加入した。
●平成27年
新入社員1名を採用したほか、旧JA支所を購入し、事務所を設置した。
●平成30年
小ギク栽培を始めるため、園芸メガ団地事業等により、機械・施設を整備した。
●令和3年
経営規模の拡大に伴い、水稲・大豆の乾燥調製のためのライスセンターを建設した。
2 経営内容
(1)主要作目としての水稲・大豆
利用権設定による自作と作業受託を合わせた85haのうち、直営が69haに及ぶことから、土地利用型作目である水稲と大豆を主要作目としている。
法人化以前は、地区外の農家が個別に耕作を請け負っていたが、法人化を機に、法人が引き受けた農地を集約して大豆栽培にも取り組んでおり、水稲作付面積の調整や耕作放棄の抑制の上でも重要な作目となっている。
水稲の作付面積は33haで、山間地ならではの小規模で不整形なほ場が多く、ほ場数は160を超えており、消雪が遅いため春作業適期も短い。また、大豆も47haで、水稲同様に小規模ほ場が多い。こうした条件不利を克服するため、機械化体系の構築とオペレーターの育成に力を入れている。
(2)周年販売の実践
春期はいちごを作付し、当地域の冷涼な気候を最大限に活用し、露地栽培に加え雨よけハウス栽培も取り入れている。半世紀に渡って産地形成に取り組み、「秋の宮いちご」としてブランドが確立している。
冬期はセリを作付し、当地域の強みである豊富な湧水を利用して初冬以降の水温を一定に維持することで、生産量こそ「三関せり」には及ばないが、優れた食味で高い市場評価を獲得している。
(3)大規模小ギク栽培
山間地特有の気温の日較差を生かした高収益作物として小ギクを選定し、平成30年に園芸メガ団地事業等により出荷調製や定植作業等の機械を導入し、令和元年に8~9月出荷の作型による栽培を開始した。
当法人には小ギクの栽培技術を有する構成員がおり、品質は既に高水準で安定し、生産量の更なる拡大が見込まれている。
(4)経営の現状
3 消費者や実需者のニーズに対応した取組
(1)こだわりのある米づくりの展開
主食用の「あきたこまち」のほか、酒米である「美山錦」の生産にも取り組むなど需要を見据えた米生産を実践しており、一等米比率も極めて高く、過去5年の平均で90%を超えている。
また、当法人の代表理事がJAの理事も務めており、消費者や米卸等、実需者からの声やニーズを速やかに法人へ還元し、絶えず生産現場の改善を行っている。
さらに、令和3年3月のライスセンター竣工により、最終調整までの内製化が実現し、これまで以上に安全・安心な高品質米の供給に取り組んでいく。
(2)首都圏老舗和菓子店向けの白小豆の契約栽培
平成25年から、「とらやの羊羹」のブランドで知られる(株)虎屋との白小豆の契約栽培に取り組んでおり、高品質な白小豆を生産している自信や、新たな市場開拓を追求する姿勢が、法人の成長に繋がっている。
ネームバリューのある実需者との取引は、地域全体の農産物等をPRする格好の機会となっているだけでなく、市場を調査し生産に還元するマーケットインの意識の醸成にも繋がっている。
(3)園芸作目の大都市圏への出荷
いちご、セリ、小ギクの出荷先は、東京や仙台等の大都市圏で90%以上を占めており、運賃負担の増加を十分に相殺できる高単価で販売している。
当法人は、園芸品目の取引を通じ、卸売市場や流通加工企業等から幅広く情報収集し、意見交換の場を積極的に設けており、組織内部だけでなく所属JAや地域全体に、得られた知見を共有している。
4 技術の紹介
(1)水稲
雪解けが遅くかんがい用水も冷たいことから、健苗育成のため、催芽籾の低温処理、育苗ハウス内のサイド灌水、2~3葉期の転圧処理等、初期生育の確保に注力している。
生育期には、適期の田植えや栽植密度の管理により初期生育を確保するとともに、肥効調節型肥料の使用等、気象条件に合った栽培管理により、高収量化及び低コスト化を実現している。
また、ほ場での作業効率や農業機械の移動時間等を綿密に試算して作業計画を作成し、ほ場管理や刈り取りの適期実施に努めているほか、IT技術を活用した環境モニタリングシステムを導入し、微気候に対応したきめ細かな作業を行っている。
さらに、適切な農薬の選択と適期防除により、雑草害や病害虫被害も抑えている。
(2)大豆
耕起・播種から収穫まで一貫した機械化体系を構築しており、作業時間の大幅な削減と省力化が実現している。
また、堆肥や苦土石灰を施用して土づくりを行うとともに、オペレーター育成のために積極的に技能研鑽の機会を設けている。
こうした取組により、雑草・病害虫防除や中耕培土、収穫等の各作業を適期に実施できており、高単収だけでなく、全量上位等級の品質評価を獲得している。
(3)小ギク
マルチ同時施肥や2条の機械移植により定植作業を効率化し、春期の作業時間を短縮しているほか、ブームスプレヤーを導入し、病害虫防除を効率化している。
また、ほ場には地下かんがいシステムを施工し、排水と灌水が可能な条件を整備している。
さらに、盆と彼岸に短期集中で大量出荷を可能とするため、作業場を建設するとともに選花機やフラワーバインダーを導入し、出荷調製を効率化している。
5 その他特記事項
(1)経営発展と担い手育成
当法人の役員は高齢者が多いが、20代、30代、40代の職員が1名ずつおり、将来の法人を担う人材として育成している。
また、給料制や社会保険制度も積極的に取り入れ、労働環境の整備を図っている。
法人が大きく発展した背景として、国や県の事業を積極的に活用したことが挙げられ、現状分析を的確に行いながら目標設定を明確にし、政策にもアンテナを張って法人経営へ迅速に取り入れてきたことで、経営発展へと繋がっている。
(2)地域への貢献
法人の活動に当たり、収益性を経営体存続の要件としながらも、「地域農業を衰退させない」ことを基本理念として、地域経済・地域社会への貢献といった公益性を一貫して意識している。
当法人は耕作放棄地の受け皿として、地域農業の衰退を抑制する役割も果たしており、中山間地域に位置する当地域に不可欠な存在となっている。
また、障害者の社会参加にも積極的に取り組んでおり、市内の福祉施設入所者などを雇用し、小菊の下葉欠き等の軽作業を担当させている。
さらに、農業の魅力を次代に伝えるため、中学生の体験学習や高校生のインターンシップ、現場研修等を積極的に受け入れ、学びの場として心に残る体験を提供しながら、子供達の育成にも力を注いでいる。
お問合せ先
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