冷涼中山間地のメリットを活かした鹿角いちごの周年栽培~沢田 賢市~
ふるさと秋田農林水産大賞の受賞者の業績を紹介します。
令和3年度ふるさと秋田農林水産大賞(担い手部門・経営体の部) 沢田 賢市
1 経営発展の経過
●昭和61年
両親は、稲作ときゅうり栽培のほか、農外所得により生計を立てていたが、沢田氏は農外収入に頼らない専業経営を目指して、秋田県立営農大学校に入学し、施設園芸品目の技術習得に励んだ。
●昭和62年
営農大学校では、鹿角地域の代表的な園芸品目の夏秋きゅうり、夏秋トマトの栽培技術を習得した。
また、自ら研修先を探して静岡県でいちごの栽培技術も習得するなど、複合化の基礎を培った。
●昭和63年
営農大学校卒業後、研修等で得た技術を生かし、実家の水稲ときゅうりに加えて、夏秋トマトと冬春いちごの施設栽培を導入し、複合経営の充実を図った。
●平成10年
高単価での販売が見込まれるいちご部門において、冬春穫り作型に加え、四季成り品種の導入による夏秋穫り作型も取り入れて、鹿角で初めて周年出荷を確立した。
その後、複合部門は収益性の高いいちごに一本化し、生産規模の拡大を図った。
●平成10年~現在
施設いちご栽培において、顧客のニーズに応えられるよう、新品種の導入や自動灌水装置等設備の充実を図っており、更なる高品質化と単収の向上を目指している。
2 経営内容
(1)いちご部門
冬春穫り作型は、当時の農業改良普及所等からの綿密な技術支援を受けながら、管内初となる半促成作型(低温カット栽培)に取り組み、12月から6月まで長期の安定出荷を実践している。
夏秋穫り作型は、静岡県の研修先から技術支援を受けながら、四季成り品種を作付し、6月から11月までの夏期の国産需要に合わせた出荷を実践している。
2つの作型を組み合わせることで、鹿角初の施設いちご栽培による周年出荷を実践し、経営の安定化を図っている。
(2)稲作部門
高齢化による担い手不足が深刻である管内で、率先して地域農業の受け皿となり、稲作の面積拡大に取り組んでいる。
(3)経営の現状
3 消費者や実需者のニーズに対応した取組
(1)「顔が見える販売」を実践
出荷はJA等に委託せず、自ら青森県弘前市の仲卸業者に出向き、自分の「顔が見える販売」を実践している。
仲卸業者と品質に対する評価や市況等の情報交換をタイムリーに行って、色や形、大きさ、出荷時期等のニーズに合わせて生産することで、販売先から高い評価を獲得し、販売価格の安定化に繋げている。
いちごは全量契約販売とし、冬春穫り作型については、冬の「ケーキ需要」に応じて弘前市の仲卸業者から首都圏の外食事業者に、また、夏秋穫り作型については、「生食需要」に応じて弘前市の仲卸業者から地元大型店等に販売している。
4 技術紹介
(1)促成栽培による冬春穫り作型(12~6月)
全国的に最も多く採用されている作型で、休眠の浅い品種を選び、低温や短日処理等の育苗管理によって花芽分化を促進し、12~6月に収穫する。
沢田氏は、休眠の浅い品種「紅ほっぺ」等を用い、定植後に遮光による短日処理を実施し、12月から確実に収穫できるようにしている。
近年の猛暑に対応するため、令和3年度から井戸水を利用したウォーターカーテンを導入し、高度で的確な低温・短日処理に挑戦している。
(2)四季成り品種による夏秋穫り作型(6~11月)
夏秋いちごは、需要に対して国内生産量が圧倒的に不足しており、輸入により需要が満たされている。
夏秋いちご栽培で安定した品質と収量を確保するには、冷涼な栽培環境が要求されるため、温度や遮光を細かく調節する高い技術力が必要となる。
沢田氏は、市場性や生産性で評価の高い四季成り品種の「すずあかり」を導入し、豊富な経験を生かして安定した夏秋いちご栽培を実現し、市場評価の獲得と単収確保を達成している。
(3)管内初となる周年栽培
沢田氏は、冬春穫り作型と夏秋穫り作型を組み合わせることで、鹿角管内で初となるで施設いちごの周年栽培を確立した。
これにより、従来の栽培方式よりも収益性を高め、いちご栽培による複合経営を実践しており、新たにいちご生産に取り組む若い生産者の優良モデルとなっている。
5 その他特記事項
就農から34年が経過し、鹿角地区農業近代化ゼミナール会長、全県ゼミ副会長を経て、現在は鹿角農業士会会長、鹿角市農地利用最適化推進委員として、作目を問わず、若手農業者の育成に努めている。
持ち前の親しみやすさから地域のリーダー的な存在となっており、生産技術の相談も多く寄せられる。
また、先進技術の導入実証モデルを引き受けたり、地元商工会等のイベントも精力的にこなすなど、長年のいちご生産で培った高い栽培技術と広い人脈を生かし、地域農業の牽引役として活躍している。
お問合せ先
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