味で勝負!雪害にも負けない「ふるさとの桃」~JA秋田ふるさと桃部会~
ふるさと秋田農林水産大賞の受賞者の業績を紹介します。
令和3年度ふるさと秋田農林水産大賞(産地部門) JA秋田ふるさと桃部会
※農林水産大臣賞も同時受賞!
1 産地発展の経過
●平成4年
増田地域でりんご生産者の有志15名が、もも2haの栽培を開始し、「JA増田町もも部会」を設立して、ももの産地化に臨む体制を構築した。
●平成12年
平鹿地域にももの取組が拡大し、25名で「JA秋田ふるさと金麓園もも部会」を設立した。
●平成22年~25年
平成22年度の豪雪により、りんごを始めとする果樹に甚大な被害が発生した。
被災園地のいち早い復旧のため、未収益期間が短く早期の所得確保に繋がり、台風シーズン前に収穫可能なもも栽培が拡大した。
新植だけでなく、雪害復旧を契機にりんごからももへの転換が進んだことにより、栽培面積は平成22年の16.1haから平成25年には23.8haまで増加した。
●平成24年
「JA秋田ふるさと増田もも部会」と「JA秋田ふるさと金麓園もも部会」が合併し、「JA秋田ふるさと桃部会」が誕生した。
導入品種の統一化や栽培技術の交流も活発に行い、地域全体の生産物の品質向上に繋がった。
●令和2~3年
令和2年度の豪雪により、ももを始めとする果樹に甚大な被害が発生した。
2 活動内容
(1)雪害からの産地復興
令和2年度の大雪では、10年前の豪雪被害の経験から、各地で一斉に樹上の雪下ろしや枝の掘り起こしが行われたものの、ももをはじめとする果樹に甚大な被害が発生した。
大災害で心が折れそうになる状況においても、生産者は決して諦めることなく、雪解けとともに折れた枝の修復や被害樹の改植を進め、早期の産地復興に日々尽力している。
(2)先進産地との技術交流
山形県の生産者との技術交流を盛んに行っており、互いの産地を訪れ、相互の技術力向上を図るとともに、篤農家を講師に剪定講習会を開催するなど、現状に満足せず高みを目指すことを怠らない。
(3)悲願の販売額1億円超えを達成
令和2年は、コロナ禍による販売不調が懸念されたが、安定して果実品質を維持できたことに加え、全国的な品薄傾向にも支えられ、初の販売額1億円超えを達成した。
(4)販売額等の推移
3 消費者や実需者のニーズに対応した取組
(1)消費地から求められる産地へ
①市場が品薄になる時期に出荷
「ふるさとの桃」の出荷は、主産地の山梨県や福島県の出荷が終盤となる盆明けから本格化する。
市場のももが品薄になる時期に出荷することで、有利な単価で販売しており、生産者の安定した所得確保を実現している。
②首都圏への販路拡大
当初、「ふるさとの桃」は県内限定で出荷していたが、横手盆地の寒暖差が醸し出す「味の良さ」が評判を呼び、首都圏の市場からも求められるようになった。
現在では、首都圏への出荷が全体の3割まで拡大している。
(2)確かな品質のももを供給
①安全・安心な出荷体制の整備
出荷箱には生産者の氏名を記載し、個々の生産者が責任をもって出荷する体制となっている。
農家が選果場に搬入したすべての商品は、JA職員が厳格な品質検査を行った上で出荷されており、万一、品質に問題があれば出荷停止となる。
また、JA独自の生産工程管理記帳運動に対応し、すべての部会員が使用農薬や作業を記帳し、チェック体制を強化することで、生産段階での事故防止に努めている。
4 技術紹介
(1)先進地からの技術導入
①ハイブリッド方式の導入
山形県の東根市や大江町の篤農家から栽培技術を熱心に学ぶなど、先進地からの技術導入も盛んに行っている。
近年は、「ハイブリッド方式」の導入が始まっており、慣行栽培よりも枝を多く配置して樹勢を調整することで、早期に樹冠拡大を図り、高品質・高収量を実現している。
②センターポール方式の導入
大規模な雪害に見舞われた経験から、雪害に強い園地づくりを進めるため、木の中心部に支柱を設置し、主枝をワイヤー等で吊り上げ、雪の重さによる枝折れを防止する「センターポール方式」の導入が進んでいる。
(2)高品質かつ省力化への挑戦
①「川中島白桃」の無袋化
主力品種の「川中島白桃」は、病害虫被害やスレ傷などを防ぎ商品化率を向上させるため、有袋栽培が一般的となっている。
一方、袋かけ作業は多大な労力を要するため、りんごの摘果作業との労力の競合が課題となっており、品質低下を引き起こしている事例もある。
このため、無袋栽培による省力化の検討が進められており、病害虫被害等を軽減しながら商品化率を高める手法の確立を目指している。
②部会統一版の病害虫防除暦
せん孔細菌病など病害虫の発生状況を踏まえ、部会員と果樹試験場、地域振興局が協議し、防除暦を作成している。
薬剤名を指定した防除暦は、他産地ではあまり例がなく、薬剤の知識が十分でない生産者にも配慮した内容となっている。
③土壌分析による土づくりの推進
「高品質なももは土づくりから」をモットーに、JAの農産物総合分析センターを活用して定期的に園地の土壌分析を行い、その結果に基づき土壌改良を実施して土づくりを推進している。
5 その他特記事項
(1)温暖化による産地拡大の可能性
産地の誕生から30年が経過し、雪害などの大きな災害に見舞われながらも、産地は発展を続けている。
ももは、りんごの補完的な品目として導入されたが、収益性の高さから、ももを主力とする経営体が増えてきている。
また、ももの主産地である山梨県や福島県では、温暖化によるみつ症等の高温障害が発生し、生産への影響が大きくなりつつあるが、横手市において温暖化は有利な要素であり、今後、もも栽培の適地として産地拡大が期待される。
(2)若い担い手の活躍
りんご等は栽培面積や生産者が減少する一方で、ももは若い担い手の参入が多い。
茨城県から移住してもも栽培を始めた新規就農者や、フロンティア研修を修了し就農した若手女性農業者2名のほか、県外からUターンして就農した夫婦など、多くの若い担い手が参入し、産地活性化の一翼を担っている。
(3)豪雪被害にも負けない産地へ
令和2年度の豪雪被害の影響は、今後数年続くとみられるが、「ふるさとの桃」を心待ちにしている全国のファンに確かな品質のももを届けるため、生産者と関係機関が一丸となって、早期の産地復興に取り組んでいく。
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