農業 横手市

秋田県横手市は、ブドウの面積が150ha程度あります。「キャンベル・アーリー」や「ナイアガラ」、「スチューベン」などの中粒種栽培が主体ですが、かつてより「北限の巨峰」産地として、大粒種の有核栽培が行われてきた経緯があります。

近年は、消費者ニーズに対応して、「ピオーネ」など食味の良い大粒種の無核栽培(種なしブドウ)の生産が行われています。

第1回 春のぶどう園地

ブドウの樹形

4月20日頃

針金を升目に組み合わせたブドウ棚です。こちらは長梢せん定の樹形です。

長めの結果母枝(前年に伸長した茶色い枝で新梢が出るもとになる)を棚面に配置しています。

4月21日

こちらは短梢せん定の樹形です。列状に主枝を配置して、結果母枝を短めにせん定しています。

列に沿って管理作業を行う場合に適した樹形です。
配置した枝の上部に簡易な雨よけフィルムを張っています。

雨よけ施設(サイドレス)

4月21日

降雨などに伴う病害の発生を少なくするために雨よけ栽培が行われています。

雨よけ栽培により開花期が露地より早まるので、作業時期の分散もはかれます。
(園地 指導農業士 小川 忠洋さん)

「巨峰」の展葉

4月30日

結果母枝から新梢が出てきています。

よく見ると、1カ所から2本の新梢があります。左側の生育の進んだ芽は主芽で、右側の生育の遅れた芽が副芽です。

生育の進んだ主芽の新梢を残るように後で整理します。

新梢の伸長

5月12日

新梢に4枚程度の葉がついています。
先端の部位には、ブドウの花穂がみえます。

花穂の拡大

花穂の部分を拡大しました。

2つの花穂がみえます。花穂は後に「巨峰」の果房になる部位です。

第2回 ブドウの開花期から摘粒まで

写真1

巨峰の開花前です。

新梢の整理や花穂の整形が行われており、とても忙しい季節になりました。

写真2, 写真3

研修会にブドウ生産者の方々が軽トラックに乗って集まってきました。研修会では、技術の向上ための指導や各地の情報交換が行われます。
今回は、ブドウの花穂整形器「ラクカット」の実演などが行われました。
(JA秋田ふるさとぶどう無核会 髙橋弘 会長実演)

写真4

開花が始まる前に不要な新梢を整理して、新梢を結束します。
1本の新梢に2花穂以上が着生している場合には、花穂数を制限するために1新梢1花穂に調整します。

花穂の整形1

6月3日

「巨峰」の花穂の中で、「副穂」の部位を切り取っておきます。これにより、後で行う花穂整形の作業が楽になります。

「巨峰」の開花始め

6月7日

つぼみに付いているキャップが取れて、「雌しべ」と「雄しべ」がみえます。

  • 雌しべ:花の中央の膨らんでいる部位
  • 雄しべ:白い糸のようにみえる部位

開花期のぶどう園は、甘い香りが漂っています。

花穂の整形2

開花が始まったら、本格的に花穂の整形を行います。
調整前の花穂は25~30cm程度あります。

 

花穂の整形3 使う花穂はこんなに短い!

花穂の先端部位を3.5~4cm程度残して、他の支梗を取り除きます。

場合によっては上段のほうに作業確認用の支梗部分を残す生産者もいます。

開花始~満開期までの1週間で、花穂の整形作業作業を行うので、この時期はとても忙しいです。

整形した花穂の満開

巨峰の整形をした花穂が満開期になりました。
満開期~満開3日後の期間に無核処理の作業を行います。

「巨峰」の無核処理(1回目)

植物成長調節剤のジベレリン錠剤やフルメット液剤を混和した水溶液に花穂を浸漬します。

この処理により、「巨峰」の無種子化と着粒安定が図られます。

手にカップを持って、花穂1つ1つ丁寧に漬けていきます。

※植物成長調節剤については、使用基準を遵守した使用を実施しております。

予備摘粒

1回目処理から5日~7日程度経つと、不良果と良果が外見で判断できるようになります。

早めの摘粒作業は手作業で出来るので、作業が楽に行えます。

「巨峰」の無核処理(2回目)

6月26日

植物成長調節剤のジベレリン水溶液に果房を浸漬します。これにより果粒の肥大促進が図られます。

(秋田県指導農業士 小川忠洋さん)

摘粒

果粒数を調整するために、着き過ぎている果粒をハサミで取り除きます。

摘粒後

36粒程度に調整しました。今は果粒の間が開いていますが、果粒が肥大していきます。

秋には500g程度の巨峰の果房が期待できるでしょう!

第3回 種なしぶどうの摘房から袋かけまで

種なし「巨峰」の棚仕立て栽培

7月11日 園地の様子

ブドウ品種:巨峰

種なしぶどうの棚仕立て園地です。新梢が伸びて来ました。

この時期は、形の悪い果房を落とす摘房作業と、適切な果房重にするために不要な果粒を取り除く摘粒作業が行われています。

7月11日 摘房作業

種なし「巨峰」の果実の粒(果粒)が急激に肥大してきました。

たくさんの果房を着果させると、着色不良や糖度不足となり、美味しい果房になりません。このため、形の悪い果房などを摘み取り、適正な着房数に調整する摘房を行います。

7月11日 摘房

摘み取られた果房です。
美味しい種なし「巨峰」にするために、重要な作業です。

7月11日 肥大が増加中

巨峰の満開から28日経過しました。この頃の果粒はまだ硬いです。

摘房作業により、ブドウの葉が日光を浴びて作り出される光合成の養分が着果している果房に送られて生育します。

7月下旬 果粒の軟化と着色開始

果粒にさわると、硬かった果粒の中に水が廻ってきたように、「プヨッ」と柔らかくなってきました(ベレーゾン期と呼びます)。
また、果粒の一部で着色が始まりました。

ブドウの果粒肥大は二重S字曲線(ダブルシグモイド)の特徴があります。
第Ⅰ期:満開後に、はじめの急速な肥大をする
第Ⅱ期:肥大が停滞する(硬核期)
第Ⅲ期:再び肥大して、着色などの成熟が進む
果粒に水が廻るベレーゾン期は、第Ⅱ期と第Ⅲ期の境目に該当します。

袋かけ作業

摘房と摘粒作業が完了したら、袋かけ作業を行います。
3.3㎡(1坪)あたりの着房数は10~12果房に調整しています。

種なし「ピオーネ」の列状に管理する栽培

近年、ブドウ大粒種の中で、高級ブドウと称されて大人気である「ピオーネ」の無核栽培を行っている園地を見てみましょう。

開花期の新梢

ブドウ品種:ピオーネ

開花期の新梢の状態です。
無核にするための処理技術は、第2回の「巨峰」で紹介した技術と概ね同様です。

摘粒作業中

種なしぶどうにするための無核処理が終わり、果房の整理と摘粒作業中です。

両側の列の樹から新梢が伸びてくるので、新梢が次第に混み合ってきました。過繁茂により暗くなると、ブドウの葉が黄変落葉してしまいます。チラチラと日光が地面に当たるように新梢を整理します。

7月7日 果房の着房

「ピオーネ」の着房状況です。
列状に果房が並んでいるのがみえます。

7月7日 摘粒作業

「ピオーネ」の果粒は17~20g程度の大粒になるので、1果房あたり30粒程度に果粒数を調整する摘粒をします。
果粒の間に隙間がありスカスカな状態ですが、収穫期までに隙間がないくらいに果粒が肥大します。

8月上旬 列状に袋かけ

果房の調整が終わり次第に、袋かけを行います。

ブドウの樹の列を中心として、左右の2列に果房の袋が並んでいます。

管理作業を楽にするため、作業者の目線の高さで、列に沿って進んでいきます。

第4回 種なしぶどうの収穫期

登熟していない結果枝

ブドウ品種:巨峰
棚仕立て栽培
ブドウ園では「巨峰」の収穫が始まりました。成熟が進むにつれて、果房の着いている結果枝(新梢)が緑色から茶褐色に変化します。
この結果枝は、まだ緑色です。登熟が進んでいない枝の果房は、赤みが残っていたり糖度が低かったりします。

登熟した結果枝

こちらの結果枝(新梢)は茶褐色になっており、枝の登熟が進んでいます。

このように茶褐色になった結果枝の果房が収穫の対象になります。

着色程度を確認

9月18日

袋の下部から「巨峰」の着色の進み具合を確認します。果粒の着色に赤みが残っている場合は収穫を見合わせます。この果房は、収穫OKです。

種なし「巨峰」の収穫期の様子

9月18日

みごとな、種なし「巨峰」ができました。開花始め頃に、花穂を4cm程度に整形したものが、こんなに大きな果房になりました。
36粒で560g、糖度18%の「種なし巨峰」でした。

種なし「巨峰」の収穫

結果枝の登熟程度や果実の着色状況を見ながら、成熟が進んでいる果房を収穫していきます。
写真で見ると、果房がぶら下がっている緑色の部分(穂梗)が長いですね。

果粉は成熟のバロメーター(「巨峰」)

ブドウは成熟が進むにつれて果粒の表面に、白い粉を振りかけたように、果粉(ブルームとも呼ぶ)が形成されます。きれいに果粉が着いていることは、成熟が進んでいることであり、また、生産者がていねいに果房を管理していることを示しています。

果粉がきれいに形成されたものを、農薬の粉が着いていると勘違いされている場合があるようですが、お間違いなく!

ブドウの果粒に種子がない!

「巨峰」:左は有核栽培、右は無核栽培

「巨峰」の有核栽培(種ありブドウ)と無核栽培(種なしブドウ)の果粒の中をみてみましょう。
左側の有核栽培の果粒には種が入っています。右側の無核栽培の果粒には種が入っていません。それぞれ、同じ「巨峰」ですが、栽培方法が異なります。

有核栽培のブドウは風味があって美味しいです。無核栽培のブドウは種がないので食べやすいです。それぞれ良い点がありますので、よろしくご賞味ください。

「シナノスマイル」

ブドウ品種:「シナノスマイル」
赤色の大粒種です。こちらも無核栽培をしています。
果房の上にカサをかけて、着色を進めています。

収穫と調整

9月18日

ブドウをコンテナで収穫して、作業場に運びます。

ブドウの箱詰め

9月18日

収穫したブドウを選別して箱詰めします。ブドウの果房をよくみて、傷などがある果粒を取り除きます。

(箱の中のブドウ品種は「スチューベン」)

種なしピオーネの収穫期

ブドウ品種:ピオーネ
列状管理による栽培
「ピオーネ」の収穫が行われています。列状に管理しているので、整然と果房の入った袋が並んでいます。

「ピオーネ」

「ピオーネ」の果粒は、「巨峰」よりもやや大きいので、果房にボリューム感があります。

「ピオーネ」の果実調査

ピオーネの果実調査を行いました。
果房の重さは640gで、甘さも十分です。

ブドウの集出荷

「JA秋田ふるさと」のブドウの集出荷施設です。

ブドウがこの集出荷施設に集められます。

品質チェックと梱包

集まったブドウの規格や品質をチェックして、梱包します。

消費地へブドウを出荷

横手市のブドウは、「キャンベル・アーリー」や「ナイアガラ」、「スチューベン」などの中粒種の生産が多いです。

「ピオーネ」の出荷

「JA秋田ふるさと」の「釣りキチ三平」印のブドウ箱です。

取材協力:JA秋田ふるさとぶどう無核会の皆さん

お問合せ

お問合せ先秋田県平鹿地域振興局 農林部 農業振興普及課 企画・振興班
住所〒013-8502 秋田県横手市旭川一丁目3番41号
電話番号0182-32-9501
FAX番号0182-33-2352

ページトップへ戻る