令和4年度豊かなむらづくり全国表彰事業の受賞事例を紹介します。

農事組合法人アグリ檜山(能代市)「地域に根ざした歴史と文化の里檜山」

東北農政局長賞受賞

1 むらづくりの動機、背景

ア むらづくりを推進するに至った動機、背景

 檜山集落は山あいに位置しており、小規模な個別兼業農家が多く、水稲単作経営が主体であった。

 稲作中心の農業経営が厳しさを増す状況の中で活路を見出すため、檜山集落では地域農業者による話し合いを重ねた。その結果、地域ブランドの檜山米を守り育てるとともに、本格的に転作の定着を図る必要があるとの結論に至り、地域の皆の英知を結集し、新たに農業法人を設立することを決意した。

イ むらづくりについての合意形成の過程とその内容

 平成12年度から実施した担い手育成基盤整備事業を契機に、今後の地域農業の方向性について、整備事業推進リーダーが中心となって話し合いを重ね、今後も地域農業を守り継ぎ発展させたいとの思いを地域農業者の総意としてまとめた。

 基盤整備事業に着手した当初は、個人の担い手への農地集積を検討していたが、平成15年11月20日、将来の地域農業の中核を担う組織として「農事組合法人アグリ檜山」を設立し、農地の受け皿とした。そして、平成16年度から能代山本地域で最初の「新しい集落営農」活動を展開し始めた。

2 むらづくりの推進体制

ア 当該集団等の組織体制、構成員の状況

 農事組合法人アグリ檜山(以下、「法人」という)は、檜山地域の基盤整備受益者75名のうち63名で構成され、第2図の体制により組織運営を行っている。主要な業務の運営は役員や部会で企画し、全員協議会で協議の上、決定している。法人の経営方針には、「農業生産の組織化」と「販売する農産物の生産安定」を2本柱として掲げている。

イ 連携してむらづくりを行う他の組織

 檜山集落は「羽州いなほ会広域活動組織」に参加し、法人を中核として農地保全活動を行っており、羽州いなほ会広域活動組織管理協定運営委員会の活動として水路の堰上げを行い、生産基盤の維持を図っている。

 また、法人の代表である山崎和博氏は、県認定の秋田県ふる里水と土指導員を務めており、地域自治会・婦人会組織等と連携し、閉校となった小学校の旧校舎周辺へ花苗を植栽するなど、景観形成活動等を通して特色ある交流活動に取り組んでいる。

第3図 むらづくりの推進体制図

3 むらづくりの農業生産面への寄与状況

ア 農業生産の取組状況

 法人の経営規模は、平成16年の54.0㏊から令和2年には70.9㏊まで拡大し、基盤整備事業を実施した農地117.6㏊の大部分を担っている。

 作付品目は、水稲55.1㏊、大豆14.5㏊、ねぎ1.3㏊となっており、水稲+大豆+野菜(ねぎ)の複合生産体系が定着している。

イ 生産の組織化と複合化による生産構造の改善

 檜山地域は元来、1戸当たり経営面積が能代市の中でも下位の土地柄だった上、農業者の高齢化により農地保全の先行きが不透明な状況であったが、地域の大部分を取り込んで実施したほ場整備事業を契機に、法人への農地集約が急激に進み、増え続けていた休耕地の発生が抑えられた。

 法人の構成員63名はほとんどが兼業農家であるが、当該法人が中心となって、稲作偏重の営農体系からの脱却を図っており、近年は大豆や長ねぎ等の園芸作目への転換に取り組んでいる。

 各種補助事業を活用しながら、農業機械やハウス等施設を新規に導入するとともに、水稲の作付けや転作団地の運営及び施設野菜の生産といった全ての生産活動を法人が担っている。

 集落営農の運営過程における最大の課題は、農作物販売価格の低迷である。特に米価の低迷は、集落営農組織の存亡にも関わる大きな問題である。

 法人では、桧山川水系の清水の恩恵を受けながら、環境にやさしい米づくりを実践しており、農薬の使用成分回数を慣行栽培の半分以下に抑えた「あきたecoらいす」栽培に取り組み、地域ブランド米の「檜山米」として付加価値を高めて販売している。この檜山米は、能代市のふるさと納税の返礼品にも採用され、新たな販路を獲得している。

4 むらづくりの生活・環境整備面への寄与状況

ア 生活・環境整備面の取組状況、女性の社会参画の促進状況及び都市住民との交流への寄与状況

 生産基盤を維持するため、法人が中心となって水路の堰上げ等を実施しているほか、地域の自治会・婦人会組織と連携し、周辺施設における植栽及び草刈り、旧羽州街道松並木の保全等に取り組むなど、景観形成を目的とした活動も行っている。

 また、「檜山地域まちづくり協議会」や「のしろ檜山周辺歴史ガイドの会」、「檜山茶保存会」と連携し、「歴史の里・桧山納豆まつり」や「檜山桜まつり」、「檜山こども冬まつり」、「檜山茶手揉み体験」等の多彩なイベントを開催して、地域外からも多くの来訪者を迎えており、都市部との交流人口拡大にも貢献している。

農作業体験の様子
檜山桜まつり
歴史ガイドの実施
檜山茶の摘み取り作業の様子
檜山こども冬まつり
檜山茶手揉み体験

イ コミュニティ活動の強化、地域への定住促進

 平成31年3月に閉校した能代市立崇徳小学校で、田植え・稲刈り体験を継続して実施してきたことから、閉校後の令和元年度以降は、統合先である能代市立第五小学校の総合学習に積極的に協力している。

 大豆の播種、収穫等の農業体験を受け入れているほか、地元で収穫した大豆を原料として地域伝統食「桧山納豆」づくり体験を行っており、令和3年度は第五小学校の3年生23名が参加した。

 こうした活動を通して、子供たちが地域の食文化や農業生産に触れる機会を創出し、地産地消や食育、農業・農村の多面的機能等に関する学習活動に貢献しているほか、世代間交流による地域活性化や営農意欲の喚起も図られている。

お問い合わせ先

お問合せ先秋田県 農林水産部 農林政策課 企画・広報チーム
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