担い手 林業 湯沢市

 今回取材したのは、特殊伐採を中心に手掛ける湯沢市の(株)佐藤総業さん。

 そちらで働く若手女性従業員の佐藤淳奈さんから、就業のきっかけや仕事の様子をインタビューしました。 

はじめに、プロフィールをお伺いします。

 生まれも育ちも湯沢市で、羽後高校を卒業した後、県が開講している林業大学校(※)へ2年間通いました。

 その後、私の親が社長を務める(株)佐藤総業に就職して、5年目になりました。

 将来的に親の会社で働きたいとは思っていましたが、林業大学校卒業後は他の会社で経験を積むべきか悩みましたね。

 最終的には、うちの仕事は「特殊伐採」と呼ばれるものが多く、特殊な技術が必要とされるので、最初から就職して仕事を覚えた方が良いと思い、(株)佐藤総業への入社を決断しました。

※林業大学校とは?

 将来の秋田の林業をリードする若い林業技術者を養成するため、秋田県林業研究研修センターが開講している2年制の研修制度です。

休日はどのように過ごしていますか?

 体を動かすのが好きで、特に冬場はスノーボードなど、ウィンタースポーツを楽しんでいます。

 他にはドライブも好きで、旧車のスポーツカーが愛車です。

 自分が生まれた年に製造された車で、運命を感じて買っちゃいました笑。

 コロナ禍になってドライブの機会も減ってしまいましたが、働き始めた頃は若くて元気があったので、車愛好家のイベントに参加するために山梨まで行ったり、ロングドライブも結構してました。

 給料のほとんどが車の維持費になってます笑。

林業を志した理由を教えてください。

 私が小さい頃から、お母さんはこの会社でずっと働いていたので、子守りだと言って連れてこられて、おんぶされながら現場を眺めていたのが記憶に残っています。

 あの頃は、チェーンソーの音がうるさいなあ、くらいの印象しかなかったんですが笑。

 学生時代に、進路はどうするかと聞かれて思い浮かんだのは、やっぱり小さい頃から見続けてきた林業。

 かっこいいなあという憧れをずっと持っていたので。

 高校の先生から「1学年上で、林業大学校に進んだ先輩がいるよ」という勧めも受け、自分も林業大学校へ入校し、そして今に至ります。

林業大学校ではどんなことを学びましたか?

 私は林業大学校の2期生で、同級生が18人いましたが、女子は自分だけ。

 1期生は女子が3人いて、私の時もいるかなと思っていたので、はじめはすごく不安で、どうやって生きていこう・・・、と思いました笑。

 大学校時代は、秋田市で一人暮らしをしながら、普通の学校と同じように毎日授業を受けていました。

 特に印象に残っているのは、みんなでいろんな会社を見学したことです。

 実家では、高性能林業機械(※)を操作するような機会はあまりないので、新鮮な経験になりました。

 他にも、木の種類を習ったり、資格も10個くらい取得できたりと、行って良かったと感じています。

 車両系の資格は苦手でしたが、逆に、チェーンソーのような手作業の感覚に近いものが好きで、自分には合っているんだということも気付きました。

※高性能林業機械とは?

 従来のチェーンソーや刈払機等の機械に比べて、作業の効率化、身体への負担の軽減等、性能が著しく高い林業機械です。 

 立木の伐倒・枝払い・玉切り・集積を一貫して行うハーベスタなど、様々な種類があります。

会社の雰囲気はいかがですか?

 私とお母さんの他にも、お父さんや親戚も在籍していて、みんな仲が良く、アットホームな良い会社だと思います。

 役割分担はあまりなく、男女関係なく皆、何でもできます。

 何年かに1回は社員旅行もあって、コロナ前は沖縄に行きました。

 私は修学旅行でも行きましたが、皆は行ったことがなくて、海がきれいだし、暑いところに行きたいよね、という話が挙がって決まりました。

今日の仕事の内容を教えてください。

 このこども園に昔からあった木なんですが、かなり大きくなり、根本も腐ってしまって危険だということで、羽後町役場から依頼を受けており、2日間かけて根元から全部伐採します。

 現場は街中で作業スペースも限られるので、高所作業車を使って順番に枝を切り落とし、樹木を倒さずに伐採する「特殊伐採」の手法で進めています。

 先ほどまで、私が高所作業車に乗って、地上から15mくらいの高さの所で枝払いをしていました。

 下の方から順番に枝払いをして、高所作業車を伸ばして段々と木の上の方まで作業を進めていきます。

 今の時期は葉がついてないので、作業がしやすいです。

 高所での作業ですが、あまり怖くはないですね。

 普段は、今日よりも高い場所で作業することもあるので、まだ全然大丈夫です。

普段の仕事の様子も教えてください。

 毎朝6時頃には起きて、7時から18時頃までずっと現場で作業をしています。

 かなり体力を使う仕事なので、夜は22時前には寝て、翌日に備えるようにしています。

 仕事の内容は、やはり街中での特殊伐採が多いですが、高速道路での一般的な土木工事や、山での伐倒・下刈り・枝打ちなどもしていて、また、冬場は除雪や屋根からの雪下ろしの仕事もあります。

得意な仕事・苦手な仕事はありますか?

 好きなのは、山で行う木の伐倒ですね。

 自分の何倍も大きい木を狙った方向に倒せると、すごく嬉しいです。

 今日のような街中での仕事では、電線もあって、車も通るので、枝を落とすのにも気をつけないといけなくて、手間がかかって大変です。

 山では、一緒に働く人に当たらなければ、好きな方向に倒して良いですからね。

 一歩間違えると命に関わる危険な作業ではあるんですが。

 苦手意識があるのは、山での下刈り作業です。

 前も見えない藪の中に刈払機だけで入っていかなきゃいけないし、虫が地肌に触れないよう夏場でも長袖で作業するので、1日作業するとへとへとになって、帰宅したらすぐ寝てしまいます。

社長でありお母さんでもある美香さんは淳奈さんにとってどんな存在ですか?

 仕事の面では、お母さんは私と全然違って、常に考えながら先を見て行動していて、すごいなあと尊敬しています。

 お母さんと一緒に作業して帰ってきても、疲れは全然見せずにご飯を作ってくれたり、家庭の中でもすごいなあと感じています。

 お母さんの手料理は何でもおいしくて、例えばポテトサラダとか、自分で作るのとは全然違って、なんでこんなおいしくできるの!?と思っています。

 お母さんは、家族でもあり社員でもあり、小さい頃から友達感覚で何でも話せるような存在です。

今後の目標を教えてください。

 指示されなくても自分で段取りを考えて、ちゃんと全部こなせるようになりたいです。

 周りから指示されたり、協力してもらったりしながら、ひととおりのことはできるようになってきたんですが、言われなきゃ気付かない時もあるので。

 まだまだ、学ぶことは多いですね。

林業への就業に興味のある方へメッセージをお願いします。

 大変な部分もあるんですけど、私でもやれているので、やる気があれば誰でもできるし、やりがいのある仕事だと思います。

 林業は若手従業員が少なくて、女性となるとなおさら少ないので、もっと仲間が増えてほしいなと思っています。

 なかなか林業を知るきっかけがないんですが、いろんな方に興味を持ってほしいですね。

 就業する前に、林業大学校に通ったのが良い経験になったと感じています。

 林業大学校で基本を学べたのは大きいと思います。基本を身につけた上で、それを応用していくのが会社なのかなと思います。

 実際に現場に来ると全然違うこともあるんですけど、基本を知っているからこそ飲み込みは早くできます。

 林業大学校の2年間はあっという間で、もっとちゃんと勉強しとけばよかったなと感じてます笑。

林業はどんな方にオススメの仕事ですか?

 自然が好きな人にはお勧めです。

 私は木の香りが好きで、木を切った時に漂ってくる香りを嗅ぐのが結構好きなんです。

 樹種によって香りが全然違うので、そういうのを嗅いで楽しんでます笑。

社長の美香さんからもお話を伺います。(株)佐藤総業はどんな会社でしょうか?

 元々は父が30~40年前に、佐藤林業という名前で始めたんですが、今では林業と建設土木の両方を総合的に手がけるようになって、父の引退後に「佐藤総業」という名前の会社にして、今年で7年目になります。

 今は、私も含めて社員は7名で、そのうち4人が女性。

 性別に関係なく作業をしています。

 社員はみんな仲が良く、私も家族同然に思っています。

淳奈さんの働きぶりを見ていて、どのように感じますか?

 吸収が早く、かなり成長していて、自分もすぐに追い越されそうなので、簡単に追い越されないようライバル意識をもっています笑。

 林業大学校では、娘がすごく良い経験をできたと思います。

 私は全部父親について見様見真似でやったんですが、逆に娘から基礎的なことを教わったりして、勉強になる部分もかなりあります。

 ただ大きな失敗をしたことがないので、慎重さがもう少し身につけばいいなと思います。

 危険な仕事なので、そこだけは肝に銘じてほしいですね。

 娘には、好きで楽しいと思えることを仕事にしてほしいと思っていましたが、結局それが私と同じ職種だったので、私としてはすごく嬉しいですね。(了)

お問合せ先

お問合せ先秋田県 農林水産部 農林政策課 企画・広報チーム
住所〒010-8570 秋田県秋田市山王4丁目1番1号
電話番号018-860-1723
FAX番号018-860-3842

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